ポエム2

「自分のことしか愛せない人間は、誰からも愛してもらえないんだって」
「……それはつまり、誰かに愛してもらえた人間は、他の誰かを愛せるようになるってこと? ……あのね、君のことを愛する覚悟も無い人間ばかりがね、君のことを悪く言うんだよ」





 クズっていうのは馬鹿にされるのが好きなのよ。何の役にも立たない人間に「君もつらかったんだね、気付いてあげられなくてごめんね」って、それが煽りじゃないなら何だって言うの?





 「好きこそ物の上手なれ」なんて言葉は、因果関係の順序も分からない大昔の馬鹿が生んだ言葉だ。





 心がガラスで出来ている。破片は他人に突き刺さる。





 外で野良猫を撫でていると、車の走っていく音が聞こえた。私も猫も、即座に音のした方向に目を向ける。不倫している気分だった。





「容姿に惹かれることは愚かなことだと考えています」
「外見よりも内面に目を向けるべきだ……ということですか?」
「いえ、美しい容姿はすぐに失われる物だからです」





 子どもの頃、大きなショウリョウバッタを踏んでしまったことがある。その時見た物は今でも忘れられない。内臓が飛び出て、グロテスクも極まったそのバッタは、なんとそのまま跳んで逃げていったんだ。……だから自殺はおすすめ出来ないな。君もあのバッタみたいになるぞ。





 理性が強い人というのは、努力でそれを保っているわけじゃない。ただそれを捨てることが出来ないから、持ったままになっているだけだろう。





 生まれたからには幸せになりたいと願っていたが、しかしそもそも、人間は幸せになるために生まれてきた物なのだろうか?
 良薬は口に苦く、つらい時間ほど長く感じ、愛だとか友情だとか……簡単には得られない物ばかりが、幸せを求める心の「急所」になる。……人間はむしろ、不幸になるべくして作られた物なのではないだろうか。





 わたしより辛い思いをしている人が世の中にはたくさんいる。だからわたしは、世界で一番不幸になったつもりで泣くことにしたの。そうすれば他の人たちは、わたしよりももっと声を上げやすくなるはずでしょう。





 社会通念や倫理観に逆らった形の思想は、実行によってのみ輝き、死によってのみ完成する。





「もしもあれが人魚だったら、きっと住処は汚泥だろう」
「サビに行くたび死にそうになるのやめてもらっていいですか」
ー 歌が下手な人 ー





 私はあの人を心配しているわけじゃない。私はただ、喉元まで出かかる「だから言ったのに」を飲み込み続ける人生の、その辛さを想像して、それを避けようとしているだけだ。





 望んだものが望んだようになる世界を望むなら、希死念慮の取り扱いは心得なければならない。





 大根おろしは一晩置いておくと辛さが消えます。人生とは違いますね。





「……いい?」
「どうぞ。……ただ僕は差別主義者なので、煙草を吸う女性は嫌いですね」
「おお、差別主義者ね。別にいいんじゃないかな、私も背が低い男は嫌いだし」





 映画を見始めて約十分が経った頃だったろうか。友人の親が死んだという報せを、友人本人から聞いて、やはり自分は人と関わることに向いていないと確信した。なんて間の悪い奴なんだと思ってしまったのだ。 





 魔女の誕生は、あなたから見た他人の心境の劇的な変化のように、理解の外で突然生まれたように見える物です。





 大きな家を見ると、あの中にある暮らしはどんなに素敵な物なんだろうとつい考えてしまう。おぞましいことは狭い家の中にあると決まっているわけでもないのに。





「実のところ私たちは、人間とほとんど変わらないんですよ。暑ければ汗をかくし、刺されれば死ぬでしょうし、それから……出来れば誰からも嫌われたくないものです」





 過去が美化されていくことは、ずっと続けられるなら素晴らしいことですよ。死に際に振り返った時、ああ良い人生だったと思えるんですから。





 死なないで……なんて無責任なことは言えないから、もしあなたが自殺をするようなら、その時はしょうがないから、私はあなたのことを恨むことにするよ。





 事実は変えられないが記憶は変えられる。いわゆるタイムマシンの実現は、そういった着想から始まった。





 科学もセクハラも「知りたい」から始まる。





「私のことは筋肉のようなものだと思ってほしい。筋肉は君を助ける。しかし君が筋肉を助ける必要はない」
「それは、そんな言い方をするなら人間はみんなそうじゃないか。疎かにするといつの間にかいなくなってしまう……」





 甘え方が分からない。甘ったれるのは得意です。





 性欲に伴わせるべき礼儀を重んじる人間のうち、果たして何割程度が、金がないばかりに礼儀に頼っているのか、知る由もない。





「笑顔が素敵な女性を見ると好きになってしまいます。けれど同時に、その笑顔をぐちゃぐちゃにしてしまいたくもなるんです。……だけどそんなことをしたら、その人はもう二度と、僕に笑顔を見せてくれなくなってしまう。どちらかを必ず諦めなきゃならないんですよ、僕は、一生……!」
「……ふーん? じゃあ今日のところは私をぐちゃぐちゃにしてよ。また明日笑ってあげるから」