あの人気作面してるゲームが気に入らねぇ

 マリオ&ソニックATオリンピックシリーズ(以下マリソニ)という一連のゲームソフト郡がある。Wiiの時代に初作が現れ、最新機がSwitchとなった今でも続いているシリーズであるが、ぼくはそのシリーズが嫌いだ。WiiU3DS、Switchと遊んだけれど、とにかくゲームの特色と馬が合わないように思う。
 なぜたったそれだけのことを作文にするのかというと、これが一作の単発ゲームだったなら「ハズレだったな」で済ませていたとぼくも思う。しかし実際にはこれが、歴史ある「人気シリーズ」のような顔をしている物だから、どうしてもそれが気に食わず、不満を文章にして吐き出さずにはいられなかった。
 今までも様々なジャンルで、肌に合わない人気シリーズには触れてきた。特にRPGやパズルやシューティングはジャンルそのものが自分に向いていないように感じることも多々あったけれど、それでもそれらは、どの作品も人によっては神ゲーと呼ぶに相応しい物なのだろうなと納得することが出来たのに。
 だからその上で言うけれど、マリオ&ソニックシリーズは、ゲームとして駄作だとしか思えない。あらゆる他作品に比べて明らかに劣っている。これからその根拠を書いていくので、まだシリーズを買ったことのない人は悪いこと言わないから、別のゲームを買うようにしてほしい。マリオパーティとかね。





 ここが気に入らねぇポイントの一、トーナメント制が存在しない。
 ……各種オリンピック競技が手の込んだ(たまにやっつけ仕事クオリティだけど)ミニゲームとして収録されているマリオ&ソニックシリーズだけれども、当然その種目の中には1vs1で戦う種目もある。空手やボクシング等の格闘技、シングルスでやる卓球なんかがそうだ。
 問題はプレイヤーが3人以上集まった時に起こる。かつてWiiUの時代(リオオリンピック)では、たとえプレイヤーが4人集まろうとも、トーナメント制にて優勝を決めることが出来なかった。
 つまりAとBが戦いAが勝ち、CとDが戦いCが勝った場合、AとCの優勝争いだとか、BとDの3位決定戦だとか、そういった物がまったく発生しないのである。「それぞれ勝ててよかったね!」でゲーム終了。それ以上のことは何もない。
 ミニゲーム集の体を取っている以上、マリソニシリーズは限りなくパーティゲームに近い作品だと言えるはずだ。ラグビーやサッカーやダブルス系の種目など、団体競技の多さからも多人数プレイ向きのゲームだと言えるだろう。なのに多人数が集まると、消化不良のまま終わってしまうゲームが多々ある。これが気に食わない。
 が、しかしまあ前作の時点では、不満には思いつつも仕方がないかなとも考えていた。次回作があるならそこで改良してくれればいいやと前向きに捉えていた。あらゆるゲームは時代を経るごとに進化していく。より快適により便利により楽しく、過去の反省点を活かし後の時代に進むほど改良されていくことを、あらゆる他作品のおかげでぼくは知っていたから。
 で、次世代機Switchへと時代が進み発売されたマリソニの東京オリンピック(2020というタイトルが今となっては物悲しい)にて。まずボクシングと空手、そして卓球シングルスは、そもそも3人以上のプレイ時に遊ぶことさえ出来なくなっていた。
 ……嘘だろ!? 思わず目を疑い、不発を示す効果音が鳴る、暗く表示された選択肢を連打してしまった。ぼくはその時初めて、退化するゲームを見たのだ。
 タイマン系競技の中で、フェンシングだけはチーム戦が行えた。それは1vs1を二戦行い、トータルの成績で勝った方の勝利とする形式であった。それを個人的には、チーム戦とは名ばかりな足の引っ張り合いが起こりかねないゲームだと感じたけれど、それについてはぼくの性格の問題であるようにも思うので別に良い。問題はなぜフェンシングはそうなっているのに、他のゲームは違うのかだ。
 格闘技系の種目については、操作の複雑化に伴いコントローラー(Joy-Con)を2本使う必要が出てきてしまったので、一度に二人しか遊べない……という見解のようだった。言葉としてどこかでそう述べられたわけではないけれど、他のゲームは全て1本のコントローラーで遊べるのに格闘技二種目だけが2本使用を必須としていることからそのような印象を受ける。
 ぼくはこれにも「嘘だろ!?」と目を疑った。だってボクシングはWiiUの時にもあったのだ。Wiiリモコンのボタンの数は、SwitchのJoy-Conのボタンの数より少ないじゃないか! 前作に上段下段の概念があったかは忘れてしまったけれど、それだってそもそも元から左右移動しか存在しないゲームだったのだから、上段下段の操作は方向キーの上下に振り分ければいいだけで(実際フェンシングはそうなっている)、コントローラー2本を使った両手持ちにする必然性がどこにあるっていうんだ……!?
 空手についても同じことが言える。空手は3DSの時に収録されていた競技だけれども、3DSJoy-Conの違いなんて、方向キーの数しか違わない。しかも「違う」というのは「3DSの方が多い」という意味だ。何をどう考えても間違いなく、Joy-Con1本で同じ操作が出来るはず。なのになぜか両手持ち。なぜか退化して3人以上のプレイ不可。信じられない。馬鹿なのか?
 卓球シングルスに関しても同じである。そもそもシングルスで遊ぼうとダブルスで遊ぼうと操作方法は変わらない。ということは、1vs1だろうと2vs2だろうと何も変わらず、当然コントローラーは常に一人1本だけを使った持ち方である。なんで4人で遊ぼうとするとダブルスしか出来ないんですかね……。
 以上のことからマリソニシリーズは、トーナメント制というパーティゲームとして必須に近い機能の実装を、考え得る限り最悪の形で見送ったことが分かる。どう見たってその点に関してことごとくやる気がない。4人集まったら1vs1の競技は諦めろと言わんばかりだ。ミニゲーム集としてそんな有り様で恥ずかしくないの? プレイヤーが多少の面倒を被って手動トーナメントを行う自由までをも奪うとは。時代を追うごとに自由度が失われるゲームってなんだよ。
 ちなみに本作には、古き良きグラフィックを再現して収録された、昔懐かしい雰囲気で遊べるレトロモードも収録されているのだけれど、それらは一競技たりとも余さず全て3人以上ではプレイ不可となっている。
 レトロモードは3人以上で遊べない。バレーボールのような「前作で2vs2ゲームとして存在していたが、今作は本編未収録となった競技」もレトロモードにだけは存在しているのに、である。マジで何考えてんだ……? 正気とは思えない。



 ここが気に入らねぇポイントの二、ゲーム性が浅すぎる。
 ……世間でも短距離走やリレーについて「連打するだけのお粗末なゲーム」というようなことが言われているけれども、マリオパーティ等の名作にもある種の息抜きとしてそういうゲームは収録されているわけで、それ自体はあまり問題ではない(マリオパーティとはミニゲームの数が違いすぎることについては、一部のハイクオリティな競技を鑑みて釣り合う物と考える)。
 問題はそんな「操作が単純すぎる」という意味での浅さではなく、ゲーム性そのものが浅い種目が多すぎることである。その筆頭として語るに外せないのはバトミントン。なんとその種目には「移動」の操作がない。これは卓球にも同じことが言える。
 バトミントンの移動は全て自動で行われる。もしもマリオテニスの移動が全自動化されて、ショットの打ちわけだけが全てのゲームとなってしまったら……と言えば伝わるだろうか。ゲーム中でプレイヤーが触れられる領域が激減しているのだ。
 家族向けに簡単なゲームとなっている、と言えば聞こえはいいかもしれないが、個人的にはそれも受け入れ難い。これは我が家の見解だけれども、いくらゲームが下手な人だろうとも、着弾地点まで走って行ってラケットで球を打つことくらいのことは出来る。むしろ「誰が打つのか」をゲームシステムの方に決められることにより発生する混乱の方が大きく、せっかくの2vs2なのに自動化によりチームワークもクソもない内容となってしまっている点もいただけない。
 何よりも、普通なら負けた時に「自分の実力不足orチームワークの不和で負けた」となるところが、「自分で移動させられればもうちょっとマシに戦えたのでは……?」という疑念がよぎるところが個人的に死ぬほど気に食わない。ゲームという媒体の最大の魅力である「自分が動かせる」という要素(インタラクティブ性というらしい)を削るに至った判断が信じられない。
 一応前作の卓球も自動移動ではあった気がするけれど、あれはあれで「パターンの複数あるタイミング合わせゲーム」として少なからず成立していたように思う。しかしバトミントンは卓球ほど球速がなく、卓球のような変化球が飛んできたりはしない。だからプレイヤーに触れられる概念として移動を奪ってはいけなかったんじゃないかと思う。単調に過ぎて遊んでいる感が薄い。
 そしてその卓球も、今作ではなんだか判定が緩くなっていて適当にやっていても打ち返せてしまうように感じるのは気のせいだろうか? このゲーム全体への敵意が感性を歪めている説は否めない。
 しかしながら、ゲーム性の浅さは「主体性を奪う自動化」だけにはとどまらない。それが本作への憎しみの源になっている。次なる具体例は、「バラエティ的クイズ」のようなしょうもなさについてだ。
 そもそも4人で遊べない時点で論外な説はあるが、とりあえずボクシングを例に出そう。マリソニではいろいろな種目にいわゆる「必殺技」があるのだけれど、ボクシングは全ゲームの中で一番それが「強すぎる」と感じる。相手から奪うダウンの九割は必殺技によるもので、それまでの殴り合いは全て、必殺技ゲージを溜めるための物でしかないと言ってもほとんど過言ではない。
 要するにボクシングは「相手の必殺技をガードして、こちらの必殺技を通す」ことが全てのゲームとなっている。一応「必殺技が使える状態の威圧でガードを強制させ、ガード無効攻撃を入れる」という読み合いの形は存在しなくもないけれど、必殺技を使える側が有利すぎるし、そのうち殴られてる側もゲージが溜まって必殺技が使えるようになり、膠着状態が訪れてしまう。
 そうでなくても、必殺技以外の攻撃だけでダウンさせることが至難の技……あるいは気の長すぎる話となっていることは納得できない。殴り合うことに飽きてくる格闘ゲームってどういうことなんだよ。
 ボクシングってそういうスポーツだっけ? となるような戦いがそこにあるのだ。トーナメント制搭載後はそういったゲームバランスがもう少しマシになればいいな……なんて考えていたら、すでに話したように本作はまさかの退化を辿ったので、愛想を尽かして然るべきである。ちなみに、必殺技なんか必要ないということや、純粋な殴り合いが楽しいゲームを作れることは、はるか昔にWiiスポーツが証明している。
 そして「必殺技が強すぎる」という「最後の問題の正解者には100億点!」みたいな、バラエティ色強めのクイズ番組的ゲームバランスは、マリソニにおいてボクシング以外のあらゆる種目にも通じてしまっている。まだマシなゲームとして度々例に挙がるフェンシングもその例外ではない。
 アーチェリーには得点2倍の矢があり、バトミントンや空手にもゲーム性そのものを支配しかねない必殺技があり……という具合に。様々なゲームで「これそういうゲームだっけ?」という構図が発生する。同じことを二度言うけれど、Wiiスポーツの方がゲームとして楽しい。
 種目名を一つ一つ上げるだけだと「言うてそんなほとんどの競技に必殺技があるわけでもないじゃん!」と思うかもしれないが、本作に収録されている競技は、ゲームオリジナルの物を除いた「実在する競技」で数えて21種類……そこから前述の単調すぎる操作のゲームを抜き、3人以上で遊べないゲームを抜き、そして必殺技が強すぎるゲームも抜き……と「まともな出来のゲーム」を選別していくと、普通に楽しめるゲームがかなり絞られてきてしまうことになる。
 重要なのは「傑作ゲーム」ではなく「普通に楽しめるゲーム」が選別の末なんとか少数残ることである。この種目一つでソフト一本分の価値がある! と言える傑作ゲームが収録されていればよかったのだけれど、悲しいかなそんな物は今作に存在しない。絞って絞ってようやく「普通に楽しめるゲーム」が残るだけだ。
 はっきり言って、新しく発売されたアルバムの半分くらいがすでに聴き飽きた曲だった時のようながっかり感を彷彿とさせてくれる。今作はそんなゲームである。まあマリソニに関しては前作もそんな調子だったけんだけれども……。ひでぇ話だ。



 ここが気に入らねぇポイントの三、ゴミみたいな操作性と謎にシビアな要素。
 ……ゲーム性そのものではなく、操作に難がありすぎるゲームもいくつか存在する。スケートボードやサーフィン、それとドリームレースという非実在の種目では特にそれが顕著だ。なんとそれらのゲームは、ジャンプボタンを押した時にジャンプしてくれない。ちょっと遅れてジャンプする。オフラインのはずなのに「ラグ」があるのだ。
 そもそも操作自体が出来ない「自動化」も気に入らないけれど、操作が正当に反映されないゴミカス級レスポンスだって紛れもないクソである。テレビとゲーム機をHDMIで繋ぐ時代の作品クオリティとは思えない。
 ゲームという媒体の最大の魅力であるインタラクティブ性とやらをことごとく台無しにする本作が、オリンピックの名を背負い、有名キャラクターを大集合させ、さも人気シリーズのような顔をしていることがぼくはどうしても許せない。このシリーズはゲーム界の面汚しだ。
 ゴミカスレスポンスの他には、謎にシビアなゲーム性が備わっていることもある。例えばドリームシューティング(広いマップを走り回り、的を探して撃ち抜き、点数を競うTPSゲーム)ではステージの一定箇所で高得点チャンスのイベントが発生するのだけれど、そのゲームには地図の概念が存在せず案内や目印の類も存在しないので、自らの方向感覚と記憶力のみを頼りにイベント地点へ向かうことになる。
 イベントに対して何かしらささやかな案内を用意してくれればそれだけでいいのに、そういうところに気が利かないせいで方向音痴に厳しい謎のガチ勝負が生まれてしまう。地図もなく迷子になるゲームの何が楽しいのかぼくにはわからない。トーナメント制が用意出来ない程度のゲームに気遣いを求める方が馬鹿なのだろうか。
 他作品の話になるけれど、4人でプレイする「カービィのエアライド」のシティトライアルのことを思えば、そもそも迷子になるような作りのマップにセンスがないのかもしれない。が、まあその点についてはぼくやその家族の方向音痴が悪いということにしてもいい。それよりも問題なのは、謎のシビアさが真に牙を剥くのは、ラグビーでのことだから。
 マリソニのラグビーは、他作品ではなかなか味わうことの出来ない題材でゲーム性もかなりいい線の良ゲー……になりきれなかった種目である。何がダメなのかというと、まずはタックルを空振りして、相手キャラの真横スレスレをヘッドスライディングしてしまう光景がよく起こることだろう。
 要するにスティック操作または当たり判定がシビアすぎるのである。無理やり肯定的に見るなら「相手の行く先を予想して、あらかじめそのルートにタックルを仕掛ける」という読みの一手を成立させるために、もしかすると相手の真横(本当に「横」ではなく「真横」、超至近距離)を通過するレベルでシビアな当たり判定は必要なのかもしれない。ぼくも一度はそう考えた。
 しかしもっとよく考えると、読みも何もない見たまんまの、普通のタックルが成立しないことが多々あるゲームって、それはゲームと呼べるのだろうか? 読みというのは単純なゲーム性の先にあるべきもので、単純なことさえ満足に出来ないゲームに読みもクソもない。やはり当たり判定のシビアさは邪魔でしかない。最終的にぼくはそう結論付けた。
 マリオパーティ9にあった2vs2のサッカーゲームでも似たような現象は時々起きたけれど、マリパ9のサッカーは間違いなく良ゲーだった。それと比較してラグビーのまずいところは「タックル後の硬直が大きくてやり直しが効かない」ことと「タックルは前方から当てた方が強い」ことにあるように思う。
 本作のラグビーにおけるタックルは、前(あるいは横)から当てると相手をダウンさせボールを落とさせるが、後ろから当てるとしがみつく形となってパスの猶予を与える物になっている。だから前方からのタックルが強いのだけれど、これが当たり判定のシビアさと凶悪な相性の悪さを発揮してしまっている。
 タックル後の硬直自体をいじってしまうと思考停止でタックル連打のクソゲーが始まりかねないからそこはいい。ただマリパ9のサッカーは相手の後ろから妨害を仕掛けたところで、前方から仕掛けた場合とまったく同じ成果が得られるところがラグビーとの大きな違いだった。だから相手が今まさにシュートしようと構えているところに、斜めではなく縦や横に真っ直ぐと軸を合わせて、外しようのない妨害を仕掛けられたのである。
 軸を合わせるという行為は絶対の信頼を持つ。斜め入力の角度調節が下手だろうと、そもそも距離感や空間把握能力が死んでいようと、真っ直ぐ進んで至近距離から攻撃することくらいは誰にでも出来る。けれどラグビーの場合それは、相手にパスの猶予を与えるような決定打に欠ける行動になってしまうのだ。
 そして相手の前方(きっちり180度、真ん前)に回り込んで軸を合わせることがそう簡単に出来るような競技でもない。必然的に斜めのタックルが必要とされてくるけれど、これがまあ外れること外れること……。
 有効なタックルには斜め入力がほぼ必須である。が、シビアすぎる当たり判定によりしばしばそれは空振りに終わる。もう少しタックルを当たりやすくしてくれれば良いのに……何度もそう思った。なぜなら本作(前作もだけど)のラグビーは、タックルへの回避手段として「ジャンプ」があるからだ。
 空中にいる相手を妨害する術はない。しかしジャンプは連発できないので、守備側はその着地を狙うことになる。……そんなゲーム性に当たり判定のシビアさが必要か? 華麗な足さばきによりタックルを躱すなんてことはほとんど起こりようがないのだ。なんでって、躱す時はジャンプするんだから。逆に走りの工夫のみで仮に回避が出来てしまうとすれば、それは回避手段が多すぎてそもそもまともなゲームになっていない。
 ジャンプの読み合いという文句無しに面白い要素を、無駄にシビアな当たり判定が邪魔している。そのようにしか感じられない。進行ルート読みのタックルなんて概念も今さっき言ったようにほぼ存在しない。多少ズレていても当たったことにした方が絶対に楽しいはずだ。なのになぜそのように作られていないのか。
 それとも我が家の人間が特別タックルが下手なだけなのか? マリパ9のサッカーはあんなに楽しかったのに。自動化による簡素化とラグビー等にある妙なシビアさが一作品の中で矛盾を起こしている。
 他のあまりにもひどすぎるクソカスクオリティのゲームに比べて、ラグビーにだけは面白さの可能性を感じるからこそ、惜しい点があると許せなくなってしまう。マリソニのラグビーはあと一歩で「この種目一つでソフト一本分の価値がある」と言わせしめる神ゲーになれるはずなのに。
 ……と見せかけて、そのラグビーにも操作性のクソ要素がある。それは「タックルが出ない」ことだ。ボタンを押しているのにタックルが出ないことがしょっちゅうある。パスもトライもジャンプも何もかも普通に出るのに、タックルだけは出ないことが多々ある。ラグ的に遅れて出るという意味ではなく、出ない時は本当にまったく出ないのだ。まらでボタンが押されていないかのようにキャラが沈黙する。
 これの原因が分からなさすぎて、作中最も可能性を感じるラグビーを諦めたくなくて、ぼくはあれこれと考えた。だがその末に生まれたどの説も、「このゲームはクソゲーである」ということを示す理由にしかなれなかった。思いついた説は3つある。
 一つ、特定の行動で発生する「無敵時間」が「タックル操作不可」にて表現されている説。
 二つ、サッカーにおけるオフサイドのように。特定の位置ではタックル出来ないルールがある説。 
 三つ、カメラ外で距離不足によるタックル不発モーションが発動しており、その後のペナルティ的硬直時間にはタックルが出せない説。
 ……まず説の一、無敵時間について。例えば「パスを出す瞬間」に無敵時間があって、相手がパスのボタン操作を行った瞬間から、実際にそれが画面上で実行されるまでの間に、見た目とは関係なく妨害を仕掛けられないタイミングが存在している説だ。
 が、これは本当にそんな物があるなら「いや今タックル当たってただろ! なんでだよ!」とヤジが飛ぶような、まさに無敵状態といった具合の演出がされていればいいわけで、見た目上(そしてルール説明上)何の解説もなく操作自体が不可能になるような表現は、何度も言うけれど「自分で操作する」というゲームで一番大切な楽しみを奪う仕様であり、致命的なクソ要素と呼ばざるを得なくなってしまう。
 説の二は、どうも相手が通常の移動をしている時(パスもジャンプも何もしていない時)にもタックルが出ない現象が起こるように感じたことから生まれた説。ぼくは知らないがラグビー経験者なら誰もが理解できるルール上の何かにより、特定のタイミングでタックルが禁止されている説だ。
 が、そうだとすればそのことについて一切の解説がないゲームなんて、不親切を通り越してプレイヤーを舐めきった物だという話になる。まともに遊ばせる気のないクソゲーということになってしまう。
 説の三は、ボタンをガチャ押ししすぎて知らぬ間に硬直を負っている説。が、そもそも大人数でやる競技であるラグビーは「自分の操作するキャラ」と「コンピューターが操作代行するキャラ」が頻繁に入れ替わるゲームであり、見えない場所でペナルティを負っているということは、カメラと操作キャラの変更(半自動)のタイミングが噛み合っていないということになってしまう。シンプルなクソ要素があるクソゲーということになってしまう。
 というかそれ以前に説の三は、ペナルティの不可視というクソ要素を疑う話でもある。相手への距離が遠すぎる時にタックルを仕掛けようとするとキャラクターがよろめいてしまうのだけれども、もちろん「タックルが出ない」という話は、そういった明らかに操作を受け付けない状態のキャラのことを指してはいない。そういった明らかなペナルティとは異なる、何らかの見えざるペナルティ的硬直が存在しているのだとしたら、それはどう考えても「見えない」こと自体がクソだろうという話になってしまう。
 どの説が正解だとしても行き着く結論はクソゲーだ。……というかそもそも、タックルが出ないって何事? どんな理由が潜んでいたとしても、何の説明もなくそんなことが許されていいのか。コントローラーが壊れている説はあり得ない、他のゲームで遊んでいる時に何の不都合もないから。
 あまりにも理解出来なさすぎて、一緒に遊ぶ家族へ聞いてみた。ボタン押してるのにタックルが出ないことってない? すると返ってきた答えは「たまにあるよね」だった。……いや、だから、それが許されてるのはおかしくないか!?
 タックルはラグビーの根幹を成す要素であって、これが使えなくなると当然ながらゲームが成立しない。なのにどうしてタックルが出ないことがあるんだ、バグの類なのか? マジでなんで? 出る時と出ない時で何が違うのか、その差さえも分からない。
 許していいわけないだろこんなこと。友人等から「たまに食事が喉を通らなくなる時があるんだよね」と言われて「たまにあるよね」とはならないことと同じだ。異常事態なんだよ、ボタン押してもタックルが出ないのは異常事態なんだよ!!
 はいクソゲーとすぐに投げ出しはせず、「なぜなんだ……?」と精一杯考えることをするくらいには、ラグビーにだけは本当にあと一歩で神ゲーになれるポテンシャルを感じているのに。そんなゲームでさえもこの有り様になっている。改めて言うけれど、もしも今からマリオ&ソニックAT2020東京オリンピックを買おうとしている人がいるなら、悪いことは言わないから、マジでやめとけ。その金で美味い物食った方が絶対いいって。
 こんなゲームがクソゲーとして話題になることもなく、むしろパーティゲームの金字塔みたいな顔して売られていることは何かおかしい。ある種ホラーでさえある。ぼくがおかしいのか……? と思えてきてしまう。もしかして他の家庭では、ボタンを押すと必ずタックルが出るのか……?
 みんな、マリソニを買わないでくれ、頼む、助けて、何なんだこのゲーム……。どうにかしてマリソニの存在をこの世から消し去ってくれ。そうでもしないと、なぜかウチの家族は本作をそれほど不満に思っていないようで、次回作が出たらそれも買いかねない勢いなんだ。WiiUの頃にマッハで飽きたはずなのに、その続編を買ってきた今年のように!
 父が本作を買ってしまった理由がまさにそうであるように、いつかこんなゲームの続編を買わなければならない理由が発生するのだとすれば、その理由とやらの内容はただ一つ、「暇」だろう。だからもう、我が家がどうしようもないほど暇にならずに済むように、早くマリオパーティの新作が出てくれますように。そう切に願う。つらいです。