魔女たちの設定

 今まで書いた話の中で登場したキャラの設定と、そのキャラの中でまだ書いていない部分の設定を上げておきます。

 

・呪いの魔女 カナリア

……魔女狩りの冤罪で拷問の末に殺された女性たちの呪いから生まれた魔女。自身の出身地である村の中に限って、あらゆる不可能を可能にする魔法が使える。村の外では魔法が使えないことはもちろん、村の外に直接の影響を及ぼす魔法も使えない。

 恐怖をもって村人を支配し魔女狩りを廃止させた経緯があるが、根はそこまで悪人ではなく、むしろ善人。特に優しい心を持った人間には好意を抱きやすく、一人の少年を気に入ってからはその少年と共に多くの時間を過ごし、少年が成長したあとにはそのまま結婚して幸せに暮らしている。

 カナリアが生まれたのは現代から見れば数百年も前の時代になるが、魔女はもちろん彼女に気に入られた少年も魔法で不老不死となっているため、今もどこかにある「呪いの魔女カナリアが生まれた村」で二人は生きている。ただし姿を変えている可能性があるので、もはや部外者からは彼女らを判別することはできない。

 結婚後カナリアは姿を消したが、彼女のあとを継ぐ第二第三の魔女が登場したので、おそらく二人は姿を変えて一般人としての人生を楽しみつつ傀儡を用意して引き続き村を統治していると思われる。

 姿を変える前のカナリアは頭に山羊の角を生やしており、露骨に人外とわかる容姿の魔女というのは魔女全体で見ても珍しいものだった。ちなみに彼女の名前の由来は不明であり、生まれた時になぜか自覚していたという。

 

 

・無知の魔女 ウィズ(現名)

……大昔に封印された魔女。ひょんなことから現代日本によみがえり、以降は初めて会った現代人であるマコトという男性と共に暮らしている。封印される前から元々日本人で、よみがえってからの主な人生の目的は現代観光。封印される前の目的は面白いことを探すことで、特に人間に強く興味を持っていたのは現在と大して変わっていない。

 目の届く範囲に限りあらゆることを可能にする魔法を有しているが、その魔法を直接「知ること」には使えないという制約が付いている。呪いの魔女カナリアに比べると世界中どこでも魔法を使える代わりに汎用性は下がっていると言える。

 ウィズという名前はマコトが命名したものだが、封印前の彼女には別の人間が別の名前をつけていた。なぜ名前がコロコロ変わるほど多くの人間と付き合っていたかというと、彼女が基本的に「魔法で願いを叶えること」と引き換えに人間に近寄ることを生業にしている魔女であったからである。

 また「無知の魔女」の由来は、魔法で知ることのできない彼女が情報収集に一番多く用いた方法が「人に聞く」ことだったので、あれこれ聞かれてうんざりした誰かが「無知」呼ばわりしたことが始まり。

 また本来の彼女は広く動き回るために大きな権力や優れた経済力を有する人物に取り入ることが多いタチで一般とはかけ離れた世界に身を置いていた期間もあり、封印される以前には様々な体験をしていていろいろと経験豊富。現代で普通の大学生であるマコトと共に過ごしているのは慣れない時代だから適当に初めに会った人に取り入ったといったところであり、彼女が現代になれればターゲットも自ずと元の方針に戻っていくと思われる。

 典型的な魔女独特の倫理観の持ち主であり、たまに人間とは絶望的に意見が合わないことがある。「面白いことを探す」もしくは「現代観光」といった目的のためには人殺しもいとわず、今までに殺した人間の数も一人や二人ではない。しかし基本的には人間に友好的な存在だと言ってよい。

 彼女を封印したのは「協和勢、過激派」と呼ばれる一部の魔女集団で、人間との平和的な生活を望む協和勢過激派により危険と判断された彼女は封印されてしまった。しかしそもそも協和勢過激派が無知の魔女の「抹殺」ではなく「封印」に至った理由が「条件付きとはいえあらゆる不可能を可能にする魔法を秘めた魔女の力は膨大で、封印することが限界だった」というものであり、封印自体も比較的簡単に解けるようになってしまっていた。

 結局現代によみがえった彼女は初めて食べる食物たちに驚いたりするほか、

「魔法で現代の楽器を作り、魔法で分身してバンドを組み、魔法で撮影機器を作り動画を撮って、マコトにやり方を教えてもらって動画サイトに演奏をアップしてみたり」

 だとか、

「魔法でマコトの家から続く異空間を作り、その中で魔法で作った戦車を乗り回す。また分身して戦争ごっこをしてみたり」

 だとかして、自分の時代にはなかった技術を吸収しつつ人生を大いにエンジョイしている。ただしの作る物は全て「形だけ本物だが構造はでたらめ。しかしなぜか本物と同じように使える」という物である。

 元々肉体が死ねば思念体(幽霊のようなもの)になって依然活動を継続できる彼女は、魔法で人間の肉体を作ってそこに思念体を意識として同化させている存在である(つまり本来の彼女は人型でさえない)。魔法で「知ること」のできない彼女は医者のように人間の仕組みに精通しているわけではないので、彼女自身が見た目や触れた感じだけ本物の、なぜか動いているでたらめな存在となっている。そのため彼女にとって「魔法で怪我を治すこと」は「問題なく生きられるようにすること」であり、「元に戻すこと」ではない。

 思念体が本体である彼女には寿命がない。抹殺が困難であった理由もこの「生物学的な死が通用しない」点が主であり、魔女とて全員が不老や不死の能力を持っているわけではないので、イレギュラーな彼女を抹殺する手段はとても限られていた。

 児子消しという存在と知り合いであり、現代で再会している。その一件で現代においても魔女は滅んでいないことを「寝起き」といえる状態の彼女も知ったのだった。

 

 

・児子消し

……人間の子どもを食らうことを至上の娯楽とする存在。元々女性の体で生まれたり性自認が女性である「魔女」というカテゴリの存在と違って、児子消しの性別についてはかなり曖昧。そのため児子消しは厳密には魔女ではないと言えるものの、実際には魔女の生きる世界に比較的深く関わって生きている。

 人間の肉を一口咀嚼することで、その人間の存在を初めからなかったことにする能力を持つ。ただし食われた人間の体が消滅するわけではなく、能力の影響は児子消しと対象の人間以外にのみ作用する。対象の人間をAとした場合、児子消しとA本人を除いたその他全ての存在が「AはAである」ということを認識できなくなる能力だと理解すると話が早い。

 一口噛みつくだけで存在をなかったことにできる能力の都合上、児子消しの殺人行為はほとんど完璧な隠密性を有しており、少なくとも人間がその犯行に気付くことは絶対にない。一部の魔女などには能力が通用しない場合もあるので、その手の存在は天敵であると言える。

 児子消しが死亡した場合無知の魔女と同じく思念体となる。ただしこちらの場合は生まれる前の胎児の意識を乗っ取ることでしかよみがえることが出来ず、よみがえる際は必然的に表向き人間の赤ん坊としてこの世に生まれてくることになる。また、存在を抹消しつつ子どもを食うことと、生まれる前の子どもの意識を乗っ取ることの二つの特徴が「児子消し」の名の由来になっている。

 子どもの姿でいることが一番子どもと接触しやすいと考えているので、ある程度成長すると自殺を選択することもある。女性として生まれてきた場合は成長したあとも子どもと接触できる機会が男性よりも多いので、自殺する場合は男性として生まれてきていた時に多い。

 また、一応その気になれば子ども以外の人間も食うことが可能で、その場合も能力は問題なく発動する。能力の他にも、人間を食うにあたって使う顎の力などが人外らしい強力さを誇っていて人間の骨までバリバリとそのまま噛み砕いて食べる。が、とにかく子ども以外の人間はマズくて食えた物じゃないそう。

 恐ろしい食人鬼のような児子消しだが、子どもを食べるという以外の点では比較的普通の人格の持ち主である。数百年生きた結果、時代の変化に伴い「名前が練り消しみたい」と言われることが増えたことを笑い話にしていたり、寝起き状態のウィズに魔女たち全体がたどった歴史を教えるなど親切な面もある。そういうところが人間にはより不気味に、より不快に映ったりしてしまうわけだが。

 無知の魔女とは旧知の仲で、かつては彼女にそれぞれタイプの違う子どもの肉体を魔法で作ってもらい、夢だった「複数人をその場に並べての食べ比べ」を達成している。お返しに無知の魔女にも子どもの肉を分けてやったことがあったが、同志にはなれなかったらしい。

 児子消しの娯楽はあくまで「食べる」ことであり、殺しはむしろ嫌いな方。一切苦痛なく子どもを殺せる方法があれば手に入れたいと度々発言している。しかし一方で、現代で無知の魔女ウィズと再会した際に出会った人間であるマコトには「いらない子どもが出来たら呼んでね」などと発言しており、やはり子どもを食うことが関わると人間には受け入れがたい人格が垣間見える。

 

 

・プダカの魔女 ドウプラン

……現代で生まれた魔女。寿命が比較的長い者が多い魔女が新たに生まれることは滅多にないことなので、現代生まれの彼女は貴重な存在と言える。

 対象を視界に収めていて、なおかつ自身が体の一部を動かし続けている間、対象は自分で宣言したこと以外の行動が取れなくなる……という能力の魔法を持つ。ややこしい能力だが、要するに視認している相手に著しい行動制限を課す能力だと覚えればいい。

 非常に戦闘向きの魔法を使う魔女だが、彼女の思想は協和勢、過激派に属するもので、ほとんど滅びたそれらの思想の後継者とも言える。

 現代によみがえった無知の魔女ウィズと対峙し戦闘を行い、魔法の初見殺し性能を見事に押し付けきってウィズを殺害している。……が、殺害というのはあくまで「肉体を殺した」だけであり、不可視の思念体となったウィズには魔法が通じず一方的に敗北。その後ウィズは当然再び肉体を作ってよみがえり、ドウプランはウィズの監視下に置かれる。

 名前の由来は彼女自身が使う魔法からきている。自分が視認(チェック)しつつ動いている(アクション)間に発動する能力で、相手に次の行動を決めさせて(プラン)から行動させる(ドゥー)効果があること。要するにPDCAが元ネタになっている。なおこの名前はドウプランが生まれた時になぜか自覚していたものであり、名付け主はいない。

 

 

・偶像の魔女 イノベラルト

……ドウプランと同じ現代で生まれた魔女。思想としては彼女とは真逆の独立勢に属する。

 自分が想定した通りの人間を作り出すことの出来る魔法を使う。性別、容姿、人格すべてを魔法の使い手が自由に決められる非常に繊細な魔法だが、老化と寿命だけは付与することができない。ただしこの魔法で作り出した人間(「偶像」と呼ばれる)はイノベラルトの意思でいつでも崩壊させることができる。崩壊した偶像は何の変哲もない泥となる。また、仮にイノベラルト本人が死亡した場合にも偶像は泥となる。

 元々は人間を観察して「いかにも人間らしい偶像」を作り出してはそれを人間界に送り込み、偶像がいつまで人外であるとバレずに人間社会で暮らすことができるのかを試し、それをゲームのように楽しんでいた。しかしある時彼女は人間の男性に恋をしてしまった。

 その男性は何人もの女性と一度に交際するような、一般的に言えば不誠実な人物であったが、それでも彼女はその男性を自分の物にしようと試みた。今まで誰よりも人間を観察し人間を知ってきた自分にはそれが可能だと思っていた。

 しかし結局遊ぶだけ遊ばれて捨てられた彼女は傷心のまま引きこもり、次にその姿を現した時の彼女は、自分をフった男性の偶像を作り出しそれを溺愛していた。また彼を「自分のもの」にしようとして失敗した彼女は、人格まで本物そっくりに作った偶像で同じ轍を踏まぬようにと、女性の偶像も数個別に作り出し「みんなのもの」として男性の偶像を扱っている。

 ひたすら自分の世界に入っている魔女のためそれを邪魔しない限り人間はおろか他の魔女にも害はない。ただし有益なこともほとんどない。愛しの男性の偶像とは、今のところそれなりに上手くいっているもよう(イノベラルト本人談)。

 名前の由来はライトノベル。一見しただけでは本物の人間と区別がつかない偶像を作る彼女の形成する偶像ハーレムが、なろう系ラノベのありがちな風景に見えるため。なおドウプランと同じくこの名前は生まれた時になぜか本人が自覚していた物であり、名付け主はいない。

 

 

※魔女の世界について

……魔女は基本的に「独立勢」と「協和勢」と呼ばれる二派に思想が分かれている。

 独立勢は人間との共存をあまり重視しない勢力である。自分の目的のためなら魔女でも人間でも殺す思想の持ち主が大半だが、逆に言えば自分にとって特に必要ないなら殺しは行わない物がほとんど。

 一方、協和勢は人間との共存を推し進める勢力である。その中でも人間社会に紛れ込んで生きようとするものと、人間に害をなす独立勢の抹殺を目論むものなど、様々なタイプが存在している。協和勢は基本的に人間には害をなさない勢力であるが、例外もある。

 独立勢はさらに大きく「自由派」と「中立派」に分けられる。自由派は何者にも縛られずに生きることを大前提としており、それを邪魔する人間や協和勢の魔女を容赦なく殺す。一方で中立派は、その手の殺し合いには関わり合いになりたくない比較的無害な勢力を指す。

 例でいうなら、ウィズとイノベラルトが独立勢自由派、児子消しが独立勢中立派に位置する。前者二人は邪魔者を嫌い敵意には敵意で返すが、後者の児子消しは基本的に争いを避けて逃げることを第一にしている。

 協和勢もさらに大きく「過激派」と「穏健派」に分かれており、過激派は独立勢の抹殺を積極的に行う勢力のことを指す。特に過激派の中でもさらにその色が濃い極派と呼ばれる者たちは独立勢の抹殺のためなら人間を巻き込むこともいとわず、同志であるはずの協和勢過激派ともたびたび争っている。一方で穏健派は争いを好まず、ただ人間社会に溶け込んでいるだけの魔女を指す。

 例でいうならドウプランが協和勢過激派(若干極派の気あり)となる。村を統治することのみを目的としているカナリアは魔女としてかなり特殊な部類で、彼女を協和勢穏健派とするか独立勢自由派とするかは意見が分かれるところ。

 独立勢と協和勢は数百年前、あるいは千年以上前からずっと長きにわたって大小様々な争いを起こしていたが、その争いのせいで魔女の数は徐々に減少していった。結果現代にいたるまでに、内輪での争いと「人間を守る」という枷を背負っていた協和勢はほとんど滅びて、現代に残った独立勢も少なくなってしまった。

 封印されていたウィズや現代で生まれた魔女たちはこのあたりの歴史を知らない上にこれらは表には残らない記録なので、ウィズが児子消しに教えてもらったように生き残りから教わるしかない。ドウプランも生き残りの魔女から教わっている。一方、イノベラルトはこの話題に一切関与せず。

 

 

 ……という設定を考えましたが、小説を書くモチベは灰になったままです。