「うのとれ!」というゲームをたぶん100戦くらい遊んだ。

 UNOとTCG(トレーディングカードゲーム)を融合させたスマホゲームアプリ、それが「うのとれ!」だ。

 カードゲームであるからにはそれぞれのカードにイラストがあるわけだが、その題材は東方projectとなっている。アプリのアイコンは魂魄妖夢だ。

 UNOとTCGの融合とはつまりどういうことなのか。その意味するところは、まず自分でデッキを組むというシステムにある。デッキを組むということは、もうその時点で「これは単なるウノではないぞ……」というオーラを放っている。全ての人類はそのオーラに惹かれる人と、嫌厭する人とに二分されるだろう。

 そしてカードゲームをするからには、それぞれのカードに「効果」が設定されている。通常のウノではスキップ、リバース、ワイルド、ドロー2、ドロー4くらいが「効果」と呼べる物だけれど、うのとれ!には全てのカードに効果がある。ただ数字と色が書いてあるだけの、何の効果もないカードは存在しない。

 すると当然、ゲームは混乱を極めることになる。想像してみてほしい、ウノのカード一枚一枚に、それぞれ別の効果が設定されていることを。洪水のような情報量に、初見では何も把握しきれないだろう。TCGオーラに惹かれた人たちは、ここで再びふるいにかけられてしまう。

 しかもこの「うのとれ!」は、ウノとしては一戦がめちゃめちゃ長い。スーパー長い、ウルトラ長い。そうなってしまう理由は後述するが、とにかくゲームをインストールしたばかりの序盤は「勝たなければカードが買えない」+「一戦がめちゃめちゃ長い」→「何度か連続で負けると心が折れる」という流れになりやすい……と思われる。折れなかったからぼくは今この作文を書いているわけで、ぼく以外のうのとれ!プレイヤーをぼくは知らないけれど。

 そしてそんな「うのとれ!」には、さらなる問題点がある。それは「対人戦の機能がない」ということ。対戦相手は永遠にCPUだ。そしてインストールを試みる際目に入ると思うのだが、このゲームはすでに、これ以上の開発が放棄されてしまっている。もう一度言うが、正真正銘、対戦相手は永遠にCP‘Uだ。

 数々の困難を乗り越えても、友達と遊び盛り上がることはできない。けれどタイトルから察してもらえる通り、ぼくはこのゲームを、全てのカードゲーム好きにおすすめしたい。いくら対人戦が出来ようと、開発がどんどん進もうと、シャドバやゼノンザードのようなクソゲーをやってる場合じゃない。うのとれ!をやれ。うのとれ!の中にある、人類の可能性を見ろ。

 ぼくはこのゲームに、実物のUNOでドロー4を直撃させられながら「爆アドォ!」とか言って騒いでる、カードゲーマーたちの夢を見たよ。

 

 

 

 うのとれ!ってこんなゲームだぜのコーナー。まずは通常のUNOと同じところから紹介。

 

・手札は7枚からスタート。誰よりも早く全ての手札を使い切った人の勝ち! ただし通常のUNOと違って、同じ数字のカード複数枚を一気に出すことは出来ないので注意。

・同じ色か、同じ数字のカードを場に出せる。ウノって言い忘れるとペナルティがある等々、基本ルールは通常のウノと同じだ!

・ただし、一戦で試合が終わるとは限らない。勝者には決着がついた時点で、「他プレイヤーの手札の総数」に等しい点数が与えられるぞ。この点数が15点以上貯まった人が、その試合の勝者となる! 逆に15点貯まるまでは、延々と再戦を繰り返すってわけだ。よくわからんけど、たぶん公式の競技ルール的なやつもそんな感じなんでしょ(適当)。

 

 点数については「他人の手札は増やしつつ自分はあがる」なんてことが狙って出来るなら、そりゃ点数のルール無しのノーマルなウノでも苦労しないじゃないって話なので、いったん忘れてもらって構わない。

 要するにうのとれ!も基本ルールは通常のUNOと大差ない。しかし逆に言えば、基本ルール以外は何もかもが違うので、次はそれを紹介していく。

 

・「色」は全部で5色。赤、青、緑、白に加えて、通常のUNOにはない黒がある。また、色を持たない「無色」も存在したり、複数の色を持つ多色カードもある。デュエルマスターズみたいだね。

・「スペル」という特殊能力の概念がある。その内容は選択したキャラ毎に異なり、基本的に一戦に一回しか使えない。一度「あがり」が出てから点数が足りずに再戦する時は、スペルの使用権も復活する。

・デッキ切れの概念がある。通常のUNOと違いそれぞれのプレイヤーが自分のデッキを持ち寄って戦うので、当然誰かのデッキだけ先になくなることもある。デッキが0枚の状態でパスするなどしてカードを引こうとすると、その時点で強制敗北になるから気を付けよう。

・各カードの能力がバリエーション豊か。場に出した時に発動する効果以外にも、手札から表にして「公開」することで発揮される効果や、条件を満たすと山札から飛び出してきて発動される効果、デジタルカードゲームの特権である「カードを書き換える」系の効果もあるぞ!(手札や山札の中にあるカードの色を変えたり、効果を無効化したりできる。ワクワクしない?)

 

 と、通常のUNOとの違いは大体そんな感じ。一番大きいのは色についてだろう。色が一つ増えるだけで、格段にカードが出しにくくなる。一戦が長くなりやすい原因の一つはそれだ。

 一戦長期化の原因はもう一つあって、このゲームにはドロー系のカードが妙に多い。妙にというか、ウノをやる中で全てのカードに効果を与えるとなると、どうしてもそうならざるを得なかったのだと思われる。しかしこの「5色+ドロー系多数」によって、一戦の長さが初心者の……つまりかつてのぼくの心を折りにきた。

 けれどこのゲームには、それを乗り越えるだけの価値がある。カードが集まってくるにつれて出来ることが増えていって、UNOとTCGの融合が、奇跡的に成功していることを実感できるようになる。そして慣れれば慣れるほど、効率的に試合を回せるようにもなってくる。そうなってくると俄然面白くなるのだ。

 面白くなりすぎて、ぼくは作文タイトルの通りだ。延々CPUと戯れてしまっている。何がそんなに魅力的なのかと言われても、この魅力はたぶんカードゲームが好きな人にしかわからない。ものすごくカードゲームっぽいのだ、うのとれ!というゲームは。

 ゲーム性はTCGらしさに満ちているけれど、対人戦がない以上、このゲームの楽しみ方自体は、おそらくRPGに近い。「ぼくはこういうところを面白いと感じる」という話をしてしまうと、それはRPGのストーリーをネタバレしてしまうような意味を持ってしまう。

 が、ぼくは知っている。どうせこれを読んで「へぇー、いっちょインストールしてみるか!」となる人はいない。そもそもこれを読む人がごく僅か、下手すればゼロだ。そのごく少数の初見の楽しみ、自分で考え開拓していく楽しみを奪ってでも、ぼくはこの話がしたい……!

 少しでもうのとれ!に興味を持ってくれた人は、ここで引き返してインストールしてみることをおすすめする。ここから先を読むのは、心が折れてからでも遅くないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず、このゲームの必勝法から教えよう。心が折れた人はこれを目指してほしい。

 散々話した通り、5色&妨害多数のこのゲームでは、まともに手札を使い切ってあがることが難しい。もちろん不可能ではないし、その気になれば正攻法でもかなりの勝率を出せることに後々ぼくは気が付いたが、それよりも先に見つけた必勝法はこうだった。

 自分があがれないのなら、他人をあがらせないまま、全員潰してしまえばいい。このゲームには山札切れによる敗北があるのだ。「ドローさせる効果」とは、相手のあがりを妨害する意味ともう一つ、山札を削る意味も持っている……!

 そんな「おい、UNOやれよ」と言われそうなデッキ破壊デッキ、それがぼくが「うのとれ!」の中で一番初めに見つけた必勝法だった。

 相手全員のデッキを破壊し尽くすためのコンボパーツとして、以下のカードが必要になる。

 

・「河城みとり

……赤の3。手札のこれが公開状態なら、相手はパスする時山札2枚破棄。

・「イビルアイΣ」

……黒の6。手札のこれが公開状態なら、相手はパスする時もう1枚引く。

 

 この二枚を使って、相手が場に出せるカードを持たずパスする時に、計4枚のカードを山札から消費するようにする。パスの重みが自分の四倍になるのだから、これが決まれば大抵自分より先に相手全員の山札が尽きる。

 公開状態にするためのコンボパーツには、主に以下の四種類を採用している。

 

・「リグル・ナイトバグ

……緑の1。自分の手札を全て公開し緑の枚数が2枚以上なら1枚破棄。

・「河城にとり

……青の3。自分の手札を全て公開し青の枚数だけ相手の山札を破棄。

「夢子」

……赤の5。自分の手札を全て公開しそれらに赤色を追加する。

・「霊鳥路空

……赤の6。自分の手札を全て公開し赤の枚数分だけ相手はカードを引く。

 

 うのとれ!は全てのカードが最大1枚までしかデッキに入れらず、30枚デッキで戦うゲームなので、この四種類、計4枚を採用することになった。

 一番上の緑、リグルは本来「手札が相手にバレるかわりに、1枚捨ててあがりに近づける」というカードなのかもしれないが、もっぱらコンボパーツとして使っている。他にも手札を公開できるカードはいくつかあるのだが、リグルは万が一コンボ計画が破綻した際に、少しでも通常のあがりに近づけるという理由で採用している。

 次の青、にとりは見たまんまだ。デッキ破壊のコンボを準備しながら、デッキ破壊を行ってくれて一石二鳥だ。ただ、青のカードには山札破棄の効果が多く、山札破棄は相手のあがりを遅らせる意味を持てない以上、単純なドローの下位互換になっている。そのため青のカードは採用枚数が少なめで、にとりの効果も後半は使えればラッキーという物になっている。手札に青が1枚もない時でも、前述のメインパーツ2枚を公開できるタイミングならガンガン使っていこう。

 次の赤、夢子はコンボパーツの公開ついでに、全ての手札に赤を足してくれる。要するに赤以外のカードは全て多色となるのだ。場への出しやすさが跳ね上がり、ほとんどのカード(現在紹介している四種類も)が場に出した際に効果を発揮するので、コンボ成立後の詰めを有利に行えるようになる。

 さらにその次の赤、お空ちゃんは公開ついでに、ドロー強制という名のデッキ破壊を行ってくれる。あがりを遅らせてくれる上に、そのまま仕留められればデッキ切れで脱落時の手札枚数が、そのまま勝者へ入るポイントになるので、大量得点により一発で試合を終わらせられる可能性もある。

 ……と、このようなギミックをメインに、その他様々なカードでメインの動きをサポートしながら、デッキ破壊による勝利を狙っていくことになる。なぜ単純なデッキ破壊効果やドロー系効果を使わず、わざわざ手札公開という手間を挟むのかというと、そこには深い理由がある。

 この「うのとれ!」というゲームにおいて、テキスト上に「相手」と書いてあった場合、それは基本的に「自分の次の順番の人」を指している。相手全員という意味ではないのだ。相手は2枚ドローすると書いてあった場合、自分の前隣の一人だけが2枚引くことになる。

 必ず四人で対戦するこのゲームには「相手(前隣の人)」「相手全員」の他にもう一つ「対面」という目標指定もあるが、とにかく重要なのは、ほとんどのカード効果が単体にしか及ばないということだ。こっちが必死こいてたった一人のデッキを破壊していたら、残る二人が漁夫の利を得るに決まっている。

 そこで初めに挙げた2枚のカードである。テキスト上は「相手」と書いてあるものの、それらのカードはなぜか効果が全体に作用する。手札公開さえ済ませてしまえば、自分以外の全員がパスするたびにすごい勢いで山札を消費していくのだ。

 これはカードのデザイン上「自分以外のパスした人は」という文章が文字量の関係で入りきらず、「相手はパスする時」と書かざるを得なかったのだと思う。(画像は実際のゲーム画面)。

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 対人戦のない閉じた環境だからこそ、そういうところを読み取り把握していくことを、「面白さ」と呼べないこともないだろう。

 とにかく何にせよ、デッキ破壊を勝ち筋にするなら、最初に挙げた2枚のコンボパーツは必須だ。逆にそのコンボさえ成立させられれば、このゲームはあがらなくても勝てる。まともにUNOをせずにUNOで勝てるのだ。これに一人黙々と遊ぶ中で気付いた時、ここまで折れずに続けてよかったと思った。ぼくがこのゲームを好きになったのはそこからだと思う。

 そしてこのゲームの面白いところは、メタカードが存在しているところにある。UNOで行うデッキ破壊という、言ってしまえば邪道のクソゲー戦法に対して、対策となるカードが多数存在しているのだ。カードゲーマーがしょっちゅう口にする「メタ」という概念が、うのとれ!にはきっちり存在している。

 その「ちゃんとカードゲームになってる感」を紹介するために、デッキ破壊デッキに対するメタカードを何枚か挙げてみようと思う。

 

・「八尺さま」

……黒の3。誰かが脱落しているなら相手は山札を全て破棄。

・「ルナサ・プリズムリバー

……黒の4。全員の公開されている手札を全て非公開にする。

・「多々良小傘

……青と緑の2。全員、手札を全て山札に戻し同数引き直す。

・「八雲紫

……青と黒の7。自分と相手の山札を全て交換。

・「ワーハクタク」

……無色の7。相手全員の手札全ての効果を消して公開させる。

 

 まずは八尺さまから解説。テキスト上の「脱落」というのはもちろん、デッキ切れで負けが確定した人のことだ。一人でも脱落者がいた場合、八尺さまが出てきた途端、その前隣の人は山札が全部消し飛ぶことになる。

 コンボを成立させて流れに乗り、勝った気になっていたら突然後ろの人から八尺さまが飛んできて即死……なんてことが起こりかねない。というか何度かあった。がっつりデッキ破壊をメタっていると言えるカードの1枚だ。

 次のルナサは、手札公開へ対するメタになっている。デッキ破壊以外にも手札効果という手間を挟んで発動する効果はあるのだが、手札公開系の最強戦法はおそらくデッキ破壊なので、もっぱらそのメタになっている。対象範囲が「全員」なので、何らかの効果で公開させられた自分の手札を非公開に戻し、ゲームを通常のUNOに戻すという意味合いも持っている。

 手札を公開するためのカードは、例えばぼくが使っているデッキだと30枚中の4枚が全てなので、一度ルナサで戻されるだけで結構つらい場合も多い。八尺さまのような致死級の威力はないが、後ろ隣以外からも飛んでくるという恐ろしさがある。

 その次の小傘は多色であり、場に出ているカードが青でも緑でも出てくる。そして手札の引き直しという効果はつまり、公開した手札を非公開に戻すという意味でもある。小傘の強力なところは、既に揃えていたパーツさえデッキに戻される可能性があることだ。ぶっちゃけルナサの上位互換だと思う。

 その次、八雲紫は、これはこれで別のクソゲーメーカーである。お互いの手札を交換させるカードは他TCGでもちょくちょく見かけるが、デッキを丸ごと交換するのは前代未聞だろう。コンボパーツを引き切る前に、後ろ隣からこいつを投げられると、もはやプランは崩壊、普通のUNOをやらざるを得なくなる。しかも八雲紫は多色だから場に出てきやすい。

 デッキを組んでUNOをやるという楽しみを頭から否定していくようなとんでもカードだけれど、その絶妙なところは「投げたからって勝てるとは限らない」というところだ。デッキを入れ替えたって負ける時は負けるし、入れ替えられた方だって勝つ時は勝つ。この「クソゲーメーカーではあってもぶっ壊れではない」ということと、出てくるタイミングが遅ければ遅いほど効力が弱くなることが、30分の1でしかデッキに入れられないゲーム性とほどよく噛み合っている。というかそもそも、UNOっていうゲームは元から運ゲーなんだから、TCGと融合したってこのくらいダイナミックなカードもあっていいのだ。

 そして最後のワーハクタク、こいつもクソゲーメーカーである。自分だけ何の被害も受けずに、他人の手札を公開するわ、その上で効果を消すわ、「俺だけ有利なUNOやろうぜ」と地で言っていくカードになっている。これを出されてそのまま負けると、非常にしょうもない気持ちになること請け合いだ。

 が、このワーハクタクにもほど良いバランス調整がされている。それは無色だということだ。無色というのは「いつでも場に出せるが、逆にどんなカードでも上に出されてしまう、相手が色を選択するワイルドカードのような物」……ではない! 否だ、断じてそんな物ではないのだ。ぼくも初めの頃はそれに驚かされた。

 無色というのは「無色カード、あるいは数字の同じ有色カードの上にしか出せず、出たあとは全てのカードを乗せられてしまう物」なのである。死ぬほど出しづらく、出したら出したで隣の人に好きなカードを出されてしまう。そんな扱いづらい代物が無色であり、だからこそ無色には派手で強力な効果を持つカードが多い。

 ワーハクタクが場に出せるのは、場に出ているカードが無色の時か、7の時だけ。青でも緑でも2でも出せる小傘と比べると出しやすさが段違いになっている。なかなか出せずに手札で腐り続け、出せた時には手遅れ……なんてこともある。だから許せるカードなのだ。

 ……というように、うのとれ!というゲーム、すごくちゃんとカードゲームになっている。インディーズゲームにありがちな、最強戦法を見つけてしまえばそれでおしまい、今までの苦労が馬鹿馬鹿しくなってしまう……というパターンではないのだ。ぼくはそこに感動した。

 ただ、これで対人戦をやるとどうなるのか、未知数なところはある。CPUに対する手札公開と、人間に対する手札公開では、きっと意味が違ってくるだろう。CPUはあらかじめ設定されたデッキを握っているだけで、たまたま各種メタカードを使っているにすぎないが、デッキ構築の段階から人間が入るとどうなるのか、まったく予想できない。

 万が一うのとれ!が対人戦に対応したとしても、その時このゲームが面白い物になれる保証は、どこにもないように思う。けれどそれがいい。対人機能さえあればと嘆くわけではなく、「どうなるかわからないけど、対人戦やってみたいなぁ」と思いながら、ひたすらCPUと戦う。それが良い。非常に良い。絶妙な引きこもり仕様だ。

 さらにこのゲームが素晴らしいのは、やりこみ要素があるということだ。だいぶ前に「キャラ毎に内容の異なる、スペルという概念がある」と言ったけれど、そのスペルは、キャラ一人につき一種類ではない。初めは50%から始まる好感度が、そのキャラを使って勝つたびに10刻みで増えていく。そして100%に達したとき、隠されし第二のスペルが解放されるのだ……!

 で、そのキャラが全員で、24人いる。ぼくがタイトルの通りこのゲームを遊びまくっているのは、その第二のスペル解放のためである。単なるやりこみではなく、解放していくことで当然新たな面白みも出てくるのだから、こんなに素晴らしいことはない。それと単純に第二のスペルがどんな内容になるのか気になる、好奇心をつついてくる面白さもある。

 せっかくなので、デッキ破壊デッキと相性の良いキャラを何人か紹介しておこう。

 

・「魂魄妖夢

……ほとんどのキャラが「UNOに勝つ」ことでアンロックされる隠しキャラに設定されている本作の、貴重な初期キャラ。

 第一スペルは「相手のUNO宣言を打ち消す」効果。これにより強制的にウノ言い忘れのペナルティを与え、2枚ドローさせた上で、その時に相手が出したカードの効果を消す。コンボ成立前や、デッキを破壊し尽くす前にあがられてしまうことを防ぎ、なおかつデッキ削り2枚の効果も成す。そんな悪くない能力だ。

 第二スペルは「誰かがあがる時、それを打ち消しカードを2枚引かせる」効果。UNO宣言打ち消しによるカード効果無効化能力を失ったかわりに、あがる見込みのない状態でとりあえず宣言するUNOに惑わされず、確実にあがりを妨害することが出来るようになっている。……まぁ正直、第一スペルと大差ない。

 

・「封獣ぬえ

……中盤でアンロックされるキャラ。第一スペルは「相手全員はカードを1枚引く」というシンプルな効果。小規模とはいえ確実に全員のあがりを妨害出来て、合計で3枚の山札を削ってくれる。

 しかし第二スペルを解放すると、このキャラの神髄が発揮されることになる。第二スペルは「相手全員は手札を全て破棄しカードを4枚引く」という効果になる。

 強制的に全員の手札を4枚にすることであがりを阻止できるが、重要なのはそこではない。このスペルは、確実に合計12枚の山札を削る効果なのだ。一部の「スペルの使用権を復活させる」系の効果を持つカードを用いれば、スペルだけで24枚も削れることになる。しかもちゃんとあがりも妨害できる。デッキ破壊デッキを使うにあたって、超有力候補のうちの一人だ。

 ……というかこの第二スペルはさすがにちょっと、通常のUNOやらせる気がなさすぎる気がする。バランス調整するとしたらここだろう。

 

・「大妖精」

……ぬえより後にアンロックされるキャラ。第一スペルは「全員カードを2枚引く」効果。全員のあがり妨害、6枚の山札削りに加えて、こちらはぬえと違い序盤に打つことで、自分のコンボパーツ集めをサポートしてくれる能力になっている。

 第二スペルはシンプルに「全員カードを3枚引く」という物。使い方は第一と同じだ。このスペルもまた通常のUNOをやらせる気がなさすぎると共に、こういうやつらが初めの方で言った「一戦の長期化」の原因を担っていたりする。

 

・「ルーミア

……ぬえと大妖精の間でアンロックされるキャラ。第一スペルは「相手全員の山札を見て黒のカードを2枚ずつ選び破棄」という効果。黒には先ほど紹介したような、デッキ破壊デッキへのメタカードが多数所属しているので、それをピンポイントで落としつつ山札削りを最大6枚行えるのは大きい。

 ただし弱点も多い。あがりを妨害する力が一切なく、初手に握られたカードは落とせず、打った時点で相手のデッキに黒がない場合は空打ちになってしまう。ただしそれでもメタカードをピンポイントで抜ける効果は魅力的なので、やはりぬえと大妖精のパワーがおかしいのだと思う。

 第二スペルは「相手全員の山札を見て黒のカードを2枚ずつ選び引かせる」という効果。普通に考えればあがり妨害が出来るようになって喜ぶべきなのだが、引かせてしまうのでメタカードを落とす役割を失っている。第一と第二、どちらを使うかは好みによるところがある。ただカード効果で使用権を増やして二度目を打つつもりなら、第一の方にしておかないとほぼ確実に相手にメタカードを渡すことになってしまう。

 

・「小悪魔」

……大妖精よりあとにアンロックされるキャラ。第一スペルは「手札を1枚選んで破棄し山札の上から3枚見て1枚を引く」という効果。つまり手札1枚と山札の上から3枚までのどれかを交換できる。コンボパーツを集める際に役立つ他、万が一デッキ破壊プランを放棄する場合は、通常のあがりをサポートしてくれる意味合いも持つ。

 ぼくが思わず笑ってしまったのは第二スペルの方だ。その効果は「場のカードの数字を4に変える」という物。いや、今まで正統派進化みたいな流れがあったのに、なんでそんな効果になったんだよ。

 要するにいつでも一度だけ4のカードを確実に出せる効果なわけだが、紹介した通り、デッキ破壊のメインギミックに4は無い。第二スペルの方は、まったく違ったデッキで役に立つのかもしれないが、専用デッキを組むほど派手な効果でもないので困ったものだ。どうしてこうなった。

 

・「パチュリー・ノーレッジ

……小悪魔よりあとにアンロックされるキャラ。第一スペルは「自分の山札の無色カード全てに緑色を追加する」効果。出しづらい故に強力な効果を持つ無色カードを、全て有色に変えてしまおうというダイナミックかつ夢のある効果だ。専用デッキを組む価値がある。

 このパチュリーを使うことで「ワーハクタクを出される前に、むしろこっちから出す」というようなことが狙える。また、無色の中には、

 

・「奏こころ」

……無色の7。自分以外はこれの上に無色のカードしか出せない。

 

 というカードが存在しているので、これを緑にすることで「無色は無色か同じ数字の上にしか出せない」というルールと合わさり、「自分以外はこれの上に7以外のカードを出せない」という強力なロック効果が実現する。これをデッキ破壊コンボ成立後に出すと、相手にパスを強制させ、自分もパスを続けることで、誰かが7を引くまで相手全員の山札が一生自分の4倍のペースで吹き飛んでいくことになる。

 その他にも様々な有力無色を気軽にデッキに入れられるようになり、他キャラとかなり異なった面白味と強さを持ったプレイが可能になる。個性ナンバーワンのキャラだと言えるだろう。

 欠点は、初手に引いてしまった無色カードに色をつけられないこと。初めにカードが配られ、その後にスペル発動を宣言するルールになっている以上仕方がない。また、何らかの効果でスペル発動を封じられると、途端にデッキが無色だらけで厳しくなってしまう。またあがりの妨害や、直接的な山札削りも出来ない。

 しかし第二スペルは「自分の手札と山札の無色カード全てにランダムに色を追加」という効果になっている。これによって第二スペルさえ解放してしまえば、第一の欠点をほとんど克服出来てしまう。スペル単体で妨害や山札削りを成立させられない弱点はそのままだが、全キャラで一番夢のある人だと思う。

 

 ……というような感じだ。初めの頃はぬえを使って「勝てる、勝てるぞぉ!」とそれまでの鬱憤を晴らしていたが、最近はむしろ他キャラの第二スペル解放を兼ねて、ぬえと大妖精を使わずどこまでやれるか試している。イカれた性能のキャラがいるなら、プレイヤー側で自重すればいいだけなのだ。しかもCPUとしか戦えないし。

 もちろん戦法をデッキ破壊から通常のUNOに変えれば、相性の良いキャラも全く別なものになっていく。そういった面白さがあるので、長々と遊んでしまうわけだ。正直キャラ性能の差はかなり激しいが、単純な優劣ではない個性が豊かなので全然楽しめる。

 そういうキャラ性能の面も併せて考えると、やはり対人戦がいざ実現すればクソゲーが始まってしまうのでは……という気がするけれど、開発を放棄されたゲームに今以上を期待することは何もない。そういうところはかえって気楽でよかった。

 

 ……され、ぼくの書きたいことはこれで大体終わりである。本当はデッキ破壊デッキの採用カードを一枚ずつ解説したいけれど、さすがにここではやめておく。やるとしても別の作文として書く。

 付き合いのような気持ちでここまで読んでくれた人がいるなら、ありがとうとしか言いようがない。ぼくはその人に敬意を表する。たぶん内容はほとんど伝わっていないと思うけど、このゲームをおすすめしたいという気持ちだけは伝わったと思う。ぜひインストールしてみてほしい。

 仮に自分が、思い描いた通りのゲームが作れる能力を持っていたとしても、UNOを元にしてこんなにちゃんとしたカードゲームを作れる気が少しもしない。うのとれ!を作った人は天才だと思う。インストールしてもらって、その感覚を共有したい……!

 はい、本当に以上です。また別の作文で会いましょう。

 

 おしまい。