マリオパーティなどの、ミニゲーム搭載型すごろくについての持論、前編。

 今、テレビゲームを用いて行うすごろくには二つの種類がある。

 一つは、操作の実力によって勝敗が決まるミニゲームの搭載されていないすごろく。いただきストリートや、桃太郎電鉄がこれに当たる。これらのすごろくにも、例えばカジノやペーロンレースなどのミニゲームらしきシステムはあるが、それらは全て「結果が完全ランダムの選択肢を自分の意志で選ぶだけ」「サイコロを振るだけ」などのいわゆる運ゲーとなっている。今回は、そういった物を「ミニゲーム」としては扱わないこととする。

 となれば当然二種類あるすごろくのうち、二つ目は実力で勝敗が決まるミニゲームが搭載されたすごろくとなる。これにはマリオパーティなどが該当する。

 ミニゲーム非搭載のすごろくが「取れる選択肢が多く、サイコロの出た目で選べる中から最善だと思われる択を選び続けるゲーム」であるのに対して、ミニゲーム搭載型のすごろくは「すごろくだけではなく、ミニゲームに勝つことで勝利に近づくゲーム」となっている。前者が運と頭脳をフルに使うゲームだとすれば、後者は運と頭脳の要素が減った代わりにミニゲームの実力が勝敗を分ける要素に加わるゲームだと言えるだろう。

 ぼくは正直前者の、ミニゲーム比搭載のすごろくはあまり好きではない。というのも、結局は運の要素が大きく、実力と言える「頭脳」の部分についてはオフラインで対戦する場合、

「全員最善解を選び続けた結果、運で勝者が決まる」

「誰かがミスをして負け、ミスをしなかった者が勝つが、そもそも全員何がミスであったのかには気づかない(悪手に気づけない)」

「他プレイヤーのミスに気付きつつ自分の勝利のために黙っておく」

 の3パターンしか発生しないが理由である。オフラインという前提である以上対戦相手は家族や友達ということになるが、パターン3のように家族や友達とゲームをやりながら相手のミスを見て静かにほくそ笑むことは、あまり健全な楽しみ方とは言えないとぼくは考えている。

 しかし残る2パターンに陥った場合は、パターン1なら結局重要なのは運という結論で終わり、パターン2ならミスがわからない=勝ち方がわからない=運に頼ることしかできないとなり事実上ほぼ完全な運ゲーが発生して「見た目が派手なおみくじを時間かけて引いているだけ」ということになり、それをゲームとは呼び難くなってしまう。ぼくは健全にゲームが楽しみたいのだ。

 もちろんミニゲーム非搭載のすごろくにも良い部分はたくさんある。与えられた選択肢の中から最善を見定め続ける楽しさは確かな物であるし、何より複雑な操作がなく誰でも楽しめる点は素晴らしい。誰でも勝てるではなく誰でも楽しめるというのが良いのだ。

 そしてオンライン対戦なら健全うんぬんの話も無効になってくるので、話は全然別になる。相手のミスを発見してほくそ笑むも良し、自分では見つけられなかった最善解を見せられて感心しつつ学習するも良しだ。それにぼくは頭が良くない部類の人間なので、おそらく馬鹿にはわからない楽しさがまだまだミニゲーム非搭載のすごろくには詰まっているのだろう。そういう意味ではおそらく麻雀などに似ている。

 ……さて、話を戻そう。今回の本題はミニゲーム搭載型のすごろくについてなのだ。

 ミニゲーム搭載型の魅力は当然、非搭載型にはなかった物が揃っていることである。つまりは、

「非搭載型よりも運の要素が少なく、実力によって勝敗が決まりやすい」

「馬鹿でも100パーセント楽しめる」

 の二点である。もしかすると頭の良い人から見ればミニゲームが搭載されてる方が運要素強いわと言いたくなるのかもしれないけれど、少なくともぼくからはそうではないように見えている。

 この手のすごろくのミニゲームにはアクション、シューティング、パズルなどの様々なジャンルが含まれる。あくまで「ミニ」なゲームのためそれぞれの操作や単純な難易度は本格的なゲームに比べて簡単になっている。

 また、そういったミニゲームの中にも「サイコロ振るだけ」「結果がランダムかつ見通せない選択肢を選ぶだけ」といった運ゲーが含まれているが、他の多くのミニゲームが基本的に実力で勝敗が決まる中で、それらの運ゲーは良いアクセントになっている。

 そもそもミニゲームを搭載しようとも本題がすごろくであることには変わりないのだから、サイコロを用いる遊びをする以上少なからず運の要素が入り込んできて当然なのだ。完全に実力だけで決まるゲームがやりたければ格闘ゲームなどで遊べばいい。ミニゲーム搭載型すごろくの魅力は運と実力が融合しつつ馬鹿にでも理解できるようになっていることなのだ。アクセントという概念も当然成立する。

 が、ぼくはこのミニゲーム搭載型すごろくについて、言いたいことがあるのである。これは物申したいという意味でもあるし、褒めちぎりたいという意味でもある。否定したいのか肯定したいのかどっちなんだという話ではあるけれども、まずはぼくがプレイしたことのある各ミニゲーム搭載型すごろくについて詳しく説明するから、それを聞いていただきたい。話はそれからである。

 

 

 まずは、ぼくがプレイしたことのあるミニゲーム搭載型すごろくをリストにまとめよう。

マリオパーティ8」「マリオパーティ9」「マリオパーティ10」

(マリオパーティDSもプレイ経験があるが、本質が「8」と変わらないことと、小学生の頃のことになるため記憶が薄く今回はスルーする)

Wiiパーティ」「WiiパーティU

ドラえもんヒミツ道具王決定戦」

(パーティゲームボックス100というゲームもプレイ経験があるが、他のゲームと比べて完成度の低い物だったので今回は割愛)

 

 ……と、全てまとめれば計8作品。今回語る主要な物だけで数えれば計6作品が今回話題にするミニゲーム搭載型すごろくとなる。wii以前のゲームは環境的にプレイできないので、これから語ることはそういった環境の中で形成された価値観が元になっていることを理解してほしい。古参の人に「最近のゲームしか知らないくせに」とか言われても困る。

 というわけで、まずは「Wiiパーティ」と「WiiパーティU」のことについて話していこうと思う。なぜそこから話を始めるのかというと、昨日の夜遊んだゲームだからである。

 

 

☆「Wiiパーティ

・ルールについて

 ……四人で遊ぶことが大前提のゲームであり、人数が足りない場合はコンピューターが穴埋めを務めてくれる。このゲームでは、

「誰よりも早くゴールを目指す、分かれ道などがない一直線でシンプルなマップのすごろく(これを「A」とする)」

 と、

「前後の概念がなく分かれ道も豊富なマップを出目の数だけ好きな方向に動き、規定のターン数でより多くの得点を獲得することが目的のすごろく(これを「B」とする)」

 の二種類のすごろくが遊べるゲーム。

 Aにおけるミニゲームは全員がサイコロを振る前(まだ誰もサイコロを振っていない時点)に「毎回(重要なのでもう一度言うが、毎回)」始まる物となっている。そして「ミニゲームの順位によって追加のサイコロが配られる&サイコロを振る順番が決まる」システムとなっている。

 詳しく言うと、四人で対戦したミニゲームでは当然順位が決まるわけだが、それぞれの順位に以下の効果が与えられる。

 

「1位……サイコロを振って進む順番は1番目。通常の六面サイコロに加えて、もう一つ六面サイコロを振る。出目の最大は特別なことがない限り11(12でない理由は後述)。」

 

「2位……サイコロを振って進む順番は2番目。通常の六面サイコロに加えて、もう一つ1~3のみが出る三面サイコロを振る。出目の最大は特別なことがない限り9」

 

「3位……サイコロを振って進む順番は3番目。通常の六面サイコロに加えて、もう一つ1~2のみが出る二面サイコロを振る。出目の最大は特別なことがない限り8」

 

「4位……サイコロを振って進む順番は4番目。通常の六面サイコロのみを振る。出目の最大は6」

 

 ここで言う特別なことというのは、ゾロ目のことである。ゾロ目が出ると、その時点での出目はキープしてさらに通常の六面サイコロを振り、それを出目に加点することができるのだ。

 要するに1位が出目12を出すことはあり得ず、6+6を出した場合はさらに追加のサイコロが与えられ出目は13~18になるということ。このシステムが非常に巧妙ですばらしい。

 

・ゲームのバランスについて

 ……いち早くゴールを目指すルールである以上このすごろくは、一見すると大きい数字が出やすいミニゲーム1位を取り続ければ確率的にほぼ勝利が約束される話であるように見える。しかし実際はゾロ目システムにより、2位と3位には「ゾロ目が出やすい=実際の出目が大きくなりやすい」という救済措置が取られているのである。

 運が良ければ2位や3位でもゾロ目で1位を追い越せる可能性が十二分にあること。そして4位には一切の救済措置がないのでミニゲームでのビリだけは避けたいこと。これらの要素があることで、運と実力が絶妙なバランスで混じり合っているのである。ミニゲーム搭載型すごろくのお手本とでも言うべき神調整と言えよう。

 ミニゲームの実力だけで勝敗が決まっても、すごろくの運だけで勝敗が決まってもいけない。そんな難しいテーマに良い落としどころを見つけたのがWiiパーティのすごろくAだとぼくは思う。しかし、このすごろくAにも欠点はある。

 ミニゲームが搭載されていても結局はすごろくなので、当然止まったマスで様々な効果が発生するイベントは多数存在する。が、このマス効果の中で「UFO」の及ぼす影響だけが異様に多きすぎるのだ。

 マス効果は基本「追加で決められた数を進む」「決められた数を戻される」の二種類しかない。演出に違いがあったり、ミニゲームの勝敗で効果が変わったりはするが、とにかく前に進むか後ろに戻るかが結果として残ることがほとんどなのである(例外もある)。

 その中でUFOマスの効果は「ランダムで選ばれた相手と自分の位置を入れ替える」というもの。要するにその時点で一番進みが遅くビリの人が止まれば、確実にその人は前に進み同時に別の誰かが確実に後ろに戻ることになる。

 他プレイヤーを後ろに戻すマスは他にもある(演出からそのマスは「竜巻」と呼んでいる)ものの、同時に自分が進めるマス効果はこのUFOだけ。しかも竜巻が他プレイヤーを戻す数はせいぜい5~6、どんなに多くても1ケタの域は出ないが、UFOはトップとビリの位置交換ともなれば余裕で2ケタの移動を行うこともある。それも相手は戻し自分は進んで、である。

 ちなみに位置交換の相手にするプレイヤーはランダムといえども必ず選ばれ不発はあり得ないので、ビリがUFOに止まれば自分の利益と他人の不利益が確定する。逆に2位や3位がUFOに止まった場合は、それが良い効果となる可能性も悪い効果となる可能性もあるわけだが……。どちらにせよ効果が及ぼす影響が他のマス効果に比べて明らかに大きい。

 そして当然といえば当然だが、厄介なことにUFOマスはトップが止まっても「位置入れ替え」の効果が強制発動する。トップが止まれば自分の不利益と他人の利益が約束されてしまい、最悪一気にビリまで転落することもあるのだ。さらにはUFOマスはゴール付近にも設置されており、そこまで調子のよかったプレイヤーがUFOを一回踏んだだけでビリになったなんてことも、わりと普通に起きてしまうのである。

 運要素を取り入れることも必要なミニゲーム搭載型すごろくだけれども、さすがにこのUFOマスだけは運の要素が強すぎるとぼくは思う。

 ミニゲームに負け続けたもしくはサイコロの出目が極端に悪かったなどしてトップと大きく差をつけられてしまったプレイヤーにとって、その時点ですごろくが勝ち目のない「消化試合」になってしまうことは避けるべき、という考えはわかる。全員が常に楽しめるゲームがベストだ。しかしビリ救済にしてもやりすぎと言えるUFOマスだけが、このすごろく唯一の欠点だろう。これさえもう少し調整してくれれば完璧だった。

 

・すごろくBについて

……正直、Bで遊んだことがあまりない。語ることがなくて申し訳ない。

 なぜあまり遊んだことがないのかというと、Aに比べて分かれ道などが多くゲームが複雑化しているわりに、それによる楽しさが大して生まれていない気がすることが理由として挙げられる。

 複雑になったわりにミニゲームに勝てばとりあえず有利に進められることと、負けたとしても絶望的なほど勝機が遠のくわけではないことはAと同じ。そしてどの道をたどって得点を取りに行けばいいのか考える部分は、ミニゲーム非搭載型のすごろくに比べればおままごとみたいな物だったように記憶している。結果、遊ぶなら別にAでいいじゃんとぼくは思ってしまった。

 思うに、ミニゲーム搭載型すごろくに非搭載型のような考える要素はいらないのだ。両者の良いとこ取りをして最強のすごろくを作ろうとしたら、器用貧乏な結果に終わったみたいな、Bからはそんな印象を受けたから。

 横断歩道を渡る時、右を見て左を見てもう一度右を見てするのではなく、右も左も同時に見ればいいのだ。そんな欲張りな理屈は、完成すればそれはさぞ素晴らしい物になるのだろうけど、並大抵のことではまず「完成」にこぎつけられない。

 首は一つしかないので一方しか向けない。そうだ鏡を使って同時に見れば……と思ったが二面の鏡から同時に見える世界は情報過多で脳が瞬時に処理できない……みたいな。WiiパーティのすごろくBはぼくらに何らかの教訓をくれるゲームだった。

 一応言っておくけれど、Bも決してつまらないゲームではない。Aの完成度が高すぎたのだ。

 

 

☆「WiiパーティU

・各ルールについて

……Wiiパーティの進化形であり、四人で遊ぶ前提は変わっていない。

「最大10個など大量のサイコロを振り派手な数を進むものの、本質は前作とほぼ同じ完成度の高い物となっている「メガスゴロク(以下Aと呼ぶ)」」

 と、

「道中で「服」をアイテムとして集め、ゴール時に集めた服によってポイントを得て誰が高得点かを競う「きせかえスゴロク(以下Bと呼ぶ)」」

 の、二種類のすごろくが遊べる。

 Aにおけるミニゲームが、追加のサイコロを得るための物であることは前作と同じ。そしてBは前作の反省を活かしたのか一本道のマップになっており、かつそのマップは円形であるため既定のターン数そこをぐるぐる回って、服を集めてはポイントに変えるシンプルさと戦略性の混ざったゲームに進化した。……が、これにもまた問題点があるので後述。

 

・Aのゲームバランスについて

……扱う数字が大きくなったものの、その分マップも大きくなったため実質的には前作と同じ。ただしサイコロを振る数が、

「1位……10個」「2位……7個」「3位……4個」「4位……2個」

 と極端に分かれるようになった。全て通常の六面サイコロであり、前作のような三面サイコロ二面サイコロなどは登場しない。

 客を飽きさせないために見た目を派手にしたのか今回は扱う数字の規模が大きいが、そのせいで「2位と3位はゾロ目チャンスがある」という前作の良さはほぼ消えた。2位と3位は完全に1位の下位互換であり、ゾロ目を狙える4位も、ゾロ目を出したからといって1位に追いつけるほどの追加サイコロはもらえない(5個追加されるので、実質2位と同じになる)。

 派手さ重視にした結果、ミニゲームとサイコロの関係については少しバランスが乱れたように感じる。多くを取り入れればいいという問題ではないという、前作Bが教えてくれた教訓がなんとなく頭をよぎったりもした。

 ただ、さすがにこのバランスのままほぼ完全な劣化作品としてこのAすごろくが世に放たれたわけではない。さして重要ではないと判断して記述しなかったが、前作Aには「一定以上の出目を出さないと通れないチェックポイント」というシステムがあった。今回のAはこれに手を加えることでバランスを取ろうとしたのだ。

 前作では、

「4以上を出さない限り永遠に通れないが、一人通れば後続はこれをスルーして通れる」

「5以上を出さねば通れないが、誰かがチャレンジするたびに数字が一つ下がり最終的には3以上で通れるようになる(これも後続はスルー)。なおかつ、失敗した場合は(有効範囲内にいれば)他プレイヤーを巻き込んで決められた場所まで戻される」

 という二つのチェックポイントがあった。ついでに言えばゴール地点もチェックポイントと同じように決められた数字を出さなければゴールできず、なおかつそこにミニゲームでの勝敗などが絡んできて最後まで緊張感の抜けない楽しい戦いが……と語ることはあるのだけれど、重要かと言われるとそうでもないので今は忘れてほしい。

 ともかく、今作のAが設けたチェックポイントは前作と同じく二つで、条件は以下の通りだった。

「奇数を出すまで通れない。後続スルー」

「サイコロを5個振って、最低一つの「1」を出さなければ通れない。後続スルー」

 の二種類である。

 前者は六面サイコロにおいて「4以上」と「奇数」の確率が等しいので前作と変化なしと言える。変わったのは後者の方である。6分の1の確率で出る物を5回で出す……というのがどの程度の物なのか馬鹿なので理解することができないが、そんな馬鹿の受けた印象としては、むしろ重要なのは「失敗してもハードルが下がらなくなった」という前作からの変更点である。

 この変更によって、運が悪いとマジで出ない。トップが通れなかった結果チェックポイントの前に三人ほど団子になって集まってしまい、三連続で次々挑んでみたものの出ない……なんてこともそれなりの回数あったという印象を持っている。

 ミニゲームとサイコロのバランスが悪くなった代わりに、この前作より強力なったチェックポイントのストッパーで帳尻を合わせようというのだ。しかし、劣化したバランスをそのまま放り投げなかったところだけは評価できるけれど、このシステムはあまり面白い物ではない。

 というのも、いち早く駆け抜けたトップがストッパーで行き詰まり、足踏みしている間に2位以降が追い付いて団子になると、ストッパーを突破した時は全員ほぼ同じ地点から走り出すので「仕切り直し」と言える状況になる。もっと言えば「マップを少し縮めてもう一度最初から」ということでもある。

 トップを走っていてその状態に出くわすと、これがものすごく萎える。今までやってきたことが無駄になるという意味では、前作のUFOマスの次くらいに深刻な気力の低下が起こるとも言える。

 前作のストッパー二つ目も複数プレイヤーが同じ地点にいる団子状態を作り出すマシンではあったが、失敗するごとにハードルが下がるというのが大きかった。それによって「こんなに下がったハードルなのに突破できない。今日は運がないな」と諦めることもできるし、一発突破すればテンションが上がる。変化があることでストッパーを楽しむことができたのだ。何より、下がったハードルを連続で突破できないなんてことはほぼなかった。

 それが今作では変化がないせいで「いつ終わるんだ……」という楽しさとは程遠い気持ちが湧いてくる。我ながらこんなに運が悪いのではダメだなぁ、という諦めもつかない。連続で失敗して団子状態になると「確率絞りすぎでは……?」という気持ちになってしまう。

 すごろくに限らずパーティゲームにおいて、遊びながらゲーム自体に文句を言いたくなったらそれはもう「楽しむ」というところから取り返しもつかないほど離れてしまった、最悪の状況だとぼくは思う。アクションや格闘ゲームなどとは違って、すごろくは「文句を言いながら楽しむ」ということが成立するタイプのゲームではないだろう。

 文句という点では「効果の影響大きすぎじゃね?」と思わせる前作のUFOも同じだったが、一度もマスに止まる人が現れない場合もあるあれと違って、ストッパーは必ず通る道だというのが大きい。

 そしてこのストッパー機能だけれど、ゴール地点にも同じ物が施されている。前作のゴールが、

「6以上を出さなければゴールできない。ただし失敗した場合はその場にとどまり、次のターンにミニゲームで得た追加サイコロもこのチャレンジに使える」

 というシステムだったのに対して、今作は、

「サイコロを10個振って、40以上を出さなければゴールできない。失敗した場合は決まったマスだけ後ろに戻され、次の条件が「35以上を出さなければ」に下げられる。ただし35未満になることはない」

 というシステムになっている。失敗時に戻されるマスが10だったか15だったか、不甲斐ないことに忘れてしまったけれど、次のミニゲームでビリになり2つしかサイコロが振れないことになるとゴール地点に舞い戻るのはかなり厳しいことだけは記憶している。アバウトで申し訳ない。

 今作のこのシステムの欠陥は「ゴールに直接ミニゲームの結果が影響しない」ことである。前作が一度ゴール地点にたどり着いてしまえば、一度失敗したとしても次のミニゲームで良い順位を取るほどゴールの確率が高まっていたのに対して、今作は失敗後ミニゲームでビリ以外ならそれなりの確率(というか2位以上で実質確定)でゴール地点に戻れるだけで、その後の実際にゴールできるかのチャレンジはミニゲームが介入しない完全に平等な運によって行われるのだ。

 これがかなりつまらない。一度ゴールに来れば1位でも2位でも大差ないというのが、ミニゲームに対するモチベーションを大きく下げる。なんなら3位でも運次第で全然ゴールに届く範囲なので余計モチベが出ない。前作が良すぎたというだけなのかもしれないけれど、これも改悪、劣化だと言わざるを得ないだろう。

 前作のミニゲームとサイコロのバランス、そしてストッパーの調整具合が絶妙だっただけに、今作では残念な点が目立ってしまう。だからクソゲーだということはなくて、確実に楽しいゲームではあるのだけど、なんだかなぁ……と思ってしまう。今作のAすごろくはそんな感じであった。

 

・Bすごろくのルール

……さて、いよいよ前作とまったく別物になった方のBの話に移ろう。

 Bは円形のマップをぐるぐる周回しつつ規定のターン数で服を集め、それによってポイントを獲得するゲームだけれど、このゲームには「同じカテゴリの服を集めるとポイントが倍になる」というシステムがある。

 服は最大で「頭」「胴」「腰」「足」の4パーツに分かれていて、これらを全て同じカテゴリで揃える(「各パーツ全て忍者の服」や「各パーツ全て海賊の服」など)と得られるポイントが倍になるのだ。腰が存在しないカテゴリや頭と胴しかないカテゴリも存在するけれど、それらはパーツが少なくて揃えるのが簡単な分得られるポイントも低く設定されている。

 ポイントの「倍」になるというのはかなり大きな話であり、倍化したポイントにそうではないポイントで対抗しようというのは到底無理と断言できる。なので事実上このBすごろくは、マップを周回し終える前にカテゴリで服を揃えてポイントを得るゲームとなっている。

 ただ、曲者なのがこの「周回」というシステムなのだ。全員が同じスタート地点からスタートして、同じゴールにたどり着く。そしてゴールした人はまた一週目と同じスタート地点から順次二週目へと走り出していく。……そんなこのゲームの「ゴール」とはそもそも何なのか。

 既定のターン数で服を集めるということは逆に言えば、そのターン数が経過するまで何度ゴールしようともゲームが終わらないということである。既定のターン数というのは実際のところ15ターンなので、要するに全員が15回ずつサイコロを振り終えるまでゲームは続くのだ。

 そんなゲームにおける「マップ上のゴール」とは何なのか。これが「ステージに上がること」なのである。

 集めた服は、集めただけではポイントにならない。同じカテゴリの服を全4パーツ集めたとしても、それだけではポイントを獲得できないのだ。その集めきった状態でゴール地点にたどり着き、ステージに上がることで初めてポイントを獲得する。Bすごろくはそういうゲームなのである。

「ステージに上がれるのは(勝敗を決める要素であるポイントを得られるのは)、基本的にゴール地点にたどり着いた時のみ」

 このシステムが、様々な他のシステムと絡み合った結果、悪い意味で曲者となっているのである。その様々なシステムというのは、例えばAではサイコロに影響していたミニゲームが、Bでは影響しないなどのことが挙げられるのだが……。詳しくは後述。

 

・Bのゲームバランス

……まずAと大きく違う点として、ミニゲームにいくら勝とうとも追加のサイコロは得られないことがある。というか、各ターンの初めにミニゲームが行われることさえない。全員最初に決まった順番のまま、通常のサイコロを振って進むことになる。

 服の入手方法についてだけれど、これは各所のマス効果として止まったマスに対応した服がもらえることになる。どのカテゴリのどのパーツ部分がどこに止まれば取得できるのかは一目瞭然なため、出目を操ることができれば服の入手は捗るだろう。

 しかしミニゲームでサイコロがもらえないのにどうやって出目を操るのか。その答えが、このBすごろく特有の「使い切り特殊サイコロ」である。

 特殊サイコロはまずゲームの始めに全員に同じ物「2倍サイコロ」が配布される。名前のままの「出た目を倍にする」という効果の使い切りアイテムである。そしてこの手の使い切りアイテムには2倍サイコロ以外にも以下の種類がある。

「3倍サイコロ……出目を3倍にする」

「4倍サイコロ……出目を4倍にする。一部イベントにて低確率で発生する効果による結果以外の入手方法がない」

「1・2・3……1か2か3しか出ない三面サイコロ」

「4・5・6サイコロ……4か5か6しか出ない三面サイコロ」

「ぴったりサイコロ……1~6の好きな目が出せるサイコロ」

 これらのサイコロは各所にあるチェックポイントを通ることで、どれか一つをランダムで得られるシステムになっている。また、使い切りサイコロは1ターンに1個しか使えないので、3倍サイコロとぴったりサイコロを合わせて確実に18を出すとか、そういったことはできない。

 これらのサイコロを駆使して狙ったパーツを取得する、あるいはいち早くゴールしてステージに上がり周回ペースを速めることで大量得点を狙う、などの戦略をとっていくことになる。……そんな重要な物である特殊サイコロであるが、もう一度言おう。

「Bすごろくでは、ミニゲームの勝敗によってサイコロを得ることはない」

 得る方法はチェックポイントの通過のみ。一本道を周回するマップなのでいつかは必ず特殊サイコロを取得することはできる。できるが、それを早める方法はない。重要なので重ねて言うけれど、

「特殊サイコロをより多く取得する手段、もしくは狙った特殊サイコロを取得する手段は、ない。無い。まったく無い。出来ることは祈ることだけ」

「そして特殊サイコロはゲーム上重要な効果を持つ」

 ……なんとなくわかってきた人がほとんだと思うけれど、ぼくはこのBすごろくをクソゲーだと思っている。ゴミカスだと思っている。もっと言えば昨日遊んだゲームというのがこのWiiパーティUのBすごろくである。それでもってその時ビリになりかけたのが、このBすごろくである。

 もう一度言うけど、今作のBはゴミです。

 Aにおいては「誰よりも早く進み、ストッパーを即座に突破して、さっさとゴールに入ること」が理想の勝ちルートだったのに対して、Bの理想は何だろうか。

 それは「止まるべきマスには止まって服を集めつつ、より早く前に進んで特殊サイコロを取得し有利にゲームを進めると同時に、さっさとステージに上がり得点獲得&次の周回に臨み追加得点を狙うこと」である。

 止まるべきマスに止まること。どんどん進んでサイコロを手に入れつつステージに上がること。これらは全て、極論いつでも好きな特殊サイコロを使うことができればほぼ完ぺきに遂行できる任務である。特殊サイコロがどれだけ重要な物なのかという話だ。あるいは、ただの素のサイコロを振る時の運がどれだけ重要かという話か。

 ところで、ミニゲームがサイコロと関わっていないというけれど、じゃあミニゲームはこのBにおいてどんな役割を果たしているのか。実はミニゲームは5ターン毎くらいのペースでAと同じように全員がサイコロを振る前、ターン開始時に始まる。もしくはミニゲームを行う効果のマスに止まった場合にも始まる。

 ターン開始時なら勝った人が、マス効果ならマスに止まった人が勝った場合、好きな服を獲得できる。ターン開始時に発生するミニゲームの場合、

「1位……ピンポイントで好きな服一つ」

「2位……カテゴリだけ選べるものの、パーツの部位はランダムで一つ」

「3位……完全ランダムで一つ」

 の服を獲得することができる。4位は何も無しである。ビリに厳しいのは前作Aと同じだ。

 ターン開始時のミニゲームは5ターン毎に来るので、要するにミニゲームに全勝すればゲーム中三回は好きな服がピンポイントでもらえることになる。理想ルートにおける「止まるべきマスに止まる」の部分は、ミニゲームに勝つことである程度補えるということになる。

 重要なのはこの「ある程度」という部分だ。ゲーム中に最大で三回ピンポイントというのは、それだけでは勝ちに直結しない。このゲームで一番の高得点は4パーツのカテゴリ一致であり、なおかつゲームはマップを一周しただけでは終わらないのだから。

 結論を言うなら、このBは「運ゲー」である。ミニゲームに勝つだけでは「サイコロをある程度補う」という役割しか果たせない、サイコロ重視のゲームなのである。

 ミニゲームに全勝する前提なら、5ターン毎のミニゲームの他に、マス効果のミニゲームでもピンポイントで服を手に入れられる。そうなればさすがに服には困らない。けれども言った通り、このゲームは「ステージに上がらなければポイントにならない」のだ。要は、大きい出目が出せずに規定ターン数以内にゴールし損ねれば、いくら服を集めても無駄だということ。

 また、ステージに上がってポイントに変えられる服は「1セット」だけ。いくらカテゴリの一致した服を複数所持していても、ポイントに変えられるのは1セットだけで、2セット目をポイントに変えるにはまたマップをぐるっと周回してゴールしなければいけない。つまり大きな出目を出さなければいけない。

 そう、このゲーム、大きな出目が出るか否かがほとんど勝敗に直結するのである。

 まずそもそも、さっきまでの話の時点でミニゲームに全勝するという前提が厳しい。ミニゲーム搭載型すごろくにおけるミニゲームとは何かという話をした時にも言ったが、ミニゲームにはアクセントとして「運ゲー」が数種類含まれているのだ。すごろくで行うミニゲームは当然ランダムなので、運ゲーを引き当ててしまった場合は実力もクソもない。全勝という前提を実践できることは、そう多くないだろう。

 仮に全て実力で決まるゲームを引いたとしても、それに全勝するというのはよほど他プレイヤーと差がない限り厳しい。その上、そもそもミニゲームで服を得るためのマス効果を発生させるには、まずそのマスに止まらなくてはならない。またミニゲームでは一切触れられない領域であるサイコロの出目次第、運次第である。

 そして、この運ゲー具合に拍車をかけるのが倍数サイコロの存在だ。2倍サイコロや3倍サイコロなどの倍数サイコロは、あまりにも振れ幅が大きすぎる。秒でわかるその振れ幅は、

「2~12」

 もしくは

「3~18」

 となっている。イカれてやがると思うのはぼくだけなのだろうか。使い切りのサイコロを一度振った時の結果なのに、10マス以上の差が出るなんて、どうかしている。倍数サイコロを使った時に大きい数字を出せた人は猛烈な勢いで進み、チェックポイントでまた新たな特殊サイコロを拾う。当然ポイントを得るためのゴールにも近づく良いことずくめになるだろう。

 一方で小さい数字しか出せなかった人は通常のサイコロと変わらないような量しか進めず、チェックポイントは遠いので新たな特殊サイコロは得られず、ゴールも遠く、手元には何も残らない。進んだマスの数だけではなく、ゲーム全体の勝ち負けとして大きく差が開くのだ。

 これを運ゲーと呼ばずに何と呼ぶのだろう。ミニゲームに勝ち続ければ確率的に有利になれたAすごろく(有利であって勝ち確定ではないところが重要)に比べてこの体たらく。サイコロ運が全てを握ったクソゲー。それがBすごろくこと、きせかえスゴロクなのである。

 一応、横取りミニゲームという救済システムはある。ミニゲームに勝った人が他人の集めた服を奪えるというものだ。上手く噛み合えばこれにより他人のカテゴリ一致を崩して大幅な獲得ポイントダウンを行いつつ、自分の服集めを進めることもできる。

 が、しかしこれも、だからなんだよって感じのシステムでしかない。カテゴリ一致を崩したところで多少なりともポイントは入るわけだし、周回遅れが追いつくほどの影響は出ない。「カテゴリ一致でゴール一回」と「カテゴリ一致と不一致でゴール一回ずつ」のどっちがポイント高いかなんて考えなくてもわかる。

 結局自分が周回遅れである限りは、横取りしようと何しようと順位は変わらないのである。これが「ステージに上がらなければポイントを得られないシステム」のもたらす汚点だ。このシステムのせいで運ゲーがさらに加速している。

 ちなみに一応、もう一つの救済措置として15ターン終了後の最後のミニゲームも存在している。そのミニゲームで1位になった人は、なんと既定ターンが終了しているにも関わらず一度ステージに上がれるのである……!

 ところでもう一回言うけれど、ミニゲームに全勝するというのはほぼあり得ないことだ。ミニゲームに勝てば勝つほど全体の勝利に近づく(近づくだけで、確実に到達できるわけではない)Aすごろくと違って、この最後のミニゲームは一回勝負である。一回で勝つか負けるか、それが全て。しかも1位とそれ以外という区別なので、2位以下には何の価値も生まれない。ゲーム性としてどちらが美しく、優れているか。考えるまでもない。

 そもそも、出目が悪い人に対する救済措置ってなんだよって話である。ゲームが下手っぴでミニゲームに勝てずいつも不利になってしまう人への救済措置ならわかる。ミニゲームではそれなりの勝率があるのに、サイコロ運が悪いだけでビリになってる人を「救済する」とはどういうことなのだろう?

 言い方を変えれば、「運が悪いだけの人を救済しなければならないゲーム性」ってなんなのだろう? これはゲームの話である。おみくじの話ではない。凶が出ちゃったならもう一回引いていいよとか、そういう話じゃないのだ。ぼくらはゲームをしているはずなのだ。決して運試しではなく。

 前作のAすごろくを「お手本のようだ」とぼくは言ったけれど、それなら今作のBすごろくにも言うことがある。これは、こいつは反面教師だ。ミニゲーム搭載型すごろくにおいてミニゲームとサイコロを切り離すとどうなるのか、しかと胸に刻み込ませてもらった。

 

 

 ……と、ここまでなんとか読んでくれた、奇跡の擬人化のような人がいたとして。その人もさすがにそろそろこう思っているはずだ。

 それぞれのゲームのすごろくについて語ることに何の意味があるのだろう?

 その答えは最後に、マリオパーティの話にたどり着いた時に明かされるのだけれど、その前にまずはドラえもんのすごろくの話を挟まなければならないし、先は長い。

 誰もついて来てはいないだろうけど、中編へ続く……。

 

(えっ、中編とかマジ? 前後編でさえないとかマジ?)