スイッチ版マリパが初見の印象より実際は面白かった話

 ↓前回までのあらすじ↓

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 というわけで、スイッチマリパ(正式名スーパーマリオパーティ)は、観測時期をマリパ8発売から現在までに絞ると過去最悪の出来なのではないか、という説をぼくは前回書きました。

 これを撤回します。

 前回「あくまで一回しかプレイしてない感想だけれど」と前置きしていたわけですけれども、しばらく新作マリオパーティをプレイしてみたところ、あの初見の時の感想は、まったく的外れで役に立たない物だったことが判明しました。

 以下、プレイしていくうちに発覚した要素を挙げながら、マリパ新作は初見時の印象よりずっと面白いゲームだったことを説明していきます。

 

 

☆初見時は知らなかった要素

その1 ジュゲム

……各マップに設置されているシステム。チェックポイント式(停止ではなく通過で発動する)のイベントになっていて、その名の通りジュゲム(マリオカートでコースアウトした時に連れ戻してくれるアイツ)が現れてプレイヤーをサポートしてくれる。

 具体的にジュゲムがやってくれるサポートは以下の二つ。

・無料で指定した相手からコインを10枚前後奪ってきてくれる

・30コイン支払うことで指定した相手からスターを1つ奪ってきてくれる

 

その2 無し

……ありません。その1で以上です。

 

 

 ……というわけです。プレイを続けるうちに明らかになった要素はすごろくモードに限って言えば、隠しキャラのキャラ固有サイコロ以外はこれしかありませんでした。ジュゲムしかありませんでした。

 しかしこれが重要なのです。死ぬほど重要です。今作のゲーム性は、ジュゲムがあるのと無いのとでは天と地の差ができます。月とすっぽんです。今この文章を書いてるニート20歳と、広瀬すず20歳くらいの違いがあります。

 そもそも前回ぼくが「今作のすごろくはゲーム性がゴミカスうんちっち」と言っていたのは、過去作に比べてプレイヤー全体に供給されるコインは増えたのに、勝敗に直接結びつく要素であるスターを取るためのコインが非常に安くなっていたからです。それによってコインは余り、余ることでコインの価値は軽くなり、コインの価値が軽いせいでミニゲームの価値まで軽くなり、結果としてミニゲームの勝利がすごろくの勝利にまったく繋がらない、重度の運ゲーが完成していると思ったからです。

 しかし、その感想はジュゲムの存在を知らなかった頃の話です。ジュゲムがいるとなれば、30コインでライバルからスターを強奪できるとなれば、話は180度変わってきます。

 「奪う」というのは「得る」よりも強いです。マリオパーティのすごろくが自身のスター獲得数最高記録を目指すゲームではなく、他人より1つでも多くのスターを獲得して勝利することが目的のゲームである限り、奪うは得るよりも絶対に強力です。

 他人から奪おうと、自力で得ようと、「自分のスター」は「1つだけ増える」ということに変わりありません。しかし「奪った人」と「奪われた人」の間では差が2つ開くor縮まることになります。1位を狙うにせよビリを回避するにせよ、適切な相手から奪うという行為は、実質ほぼスター2つ分の価値があるのです。

 自分より1つ多い相手から奪えば1の差をつけて逆転、自分より2つ多い相手から奪えば同点に、自分より1つ少ない相手から奪えば差を1から3へと一気に広げることができる。スターを奪う、それも自分で指定した相手から確実に奪うというのは、単純に自力でスターを得ることよりも大きな成果を成します。

 しかしそれでもジュゲムでスターを奪取するには30コインが必要なので、一見すると「奪うことが実質スター2つ分の成果を成しても、スター1つ10コインの相場では割に合わない」という風に見えるかもしれません。が、割に合わないとか、全然そんなことはないのです。

 このゲームで「とにかく前に進むこと」が強いのは、コインをいくら持っていても目的地にたどり着かなければスターを取得できないことが理由です。例え30コインを持っていても、スターのある場所に三回行かなければそのコインを全てスターに変えることはできません。しかしそうしてマップを走り回るうちにコインはさらに貯まりますし、何より10ターンしかない試合の間で、自分が三回もスターに止まれる状況は中々の幸運です。そう頻繁にあることではないでしょう。

 実際ジュゲムを発見する前の試合では結局スターに変えられなかったコインが山ほど余りました。そんな環境においてジュゲムは実質的に「割高である代わりに、一括でスターを2つ買えるシステム」なのです。30コインのうち20コインはスターの代金、残る10コインは損をしているのではなく、それで「目的地に行くまでの時間」を買っているのです。

 とにかく前に進むことが強いゲームにおいて「実質的に前に進んだと言える効果」はとても強力で、10コインでそれが買えるなら安い物でしょう。ジュゲムは余り安いコインを上手く勝利に結びつけながら処理する強力なシステムであり、これ無しで今作のすごろくは成立しません。

 しかし、初見時のぼくはこのジュゲムの存在をまったく知りませんでした。縛りプレイをしながら遊んでいたような物です。そりゃクソゲーにも見えます。けれども実際は、今作のマリオパーティのすごろくはクソゲーなんかじゃありませんでした。今作のすごろくは、ジュゲムを前提にゲームバランスが作られていたのです。

 ジュゲムの判明によりコインは価値を取り戻し、それに従ってミニゲームも価値を取り戻し、サイコロの運とミニゲームの実力が混ざり合って勝敗につながる楽しい楽しいマリオパーティが帰ってきました。

 いや、それは初めからここにあったのです。ぼくが気が付けなかっただけで、ジュゲムも、青い鳥も、初めからここにいたのです。マリオパーティ万歳!

 

 

 ……と、完全なハッピーエンドになってくれればぼくも嬉しかったんですけど、実際のところはそうもいきません。諸悪の根源であるコインの価値の死が幻覚だったことを見破ったので今作マリパクソゲーを脱出しましたが、じゃあ良作なのかと言われると、ちょっと首をひねりたくなる要素がいくつかあります。

 以下、それについて話していきます。

 

☆今作の問題点

その1 キャラ性能

……今作はキャラが常に固有の特殊サイコロを持っているので、マリパ史上でおそらく初めて、キャラごとの強さに差が出ています。そして前回の作文で話したテレサなどの強キャラの存在も確認されています。

 キャラ性能に差が出ると、ゲームが始まった瞬間から不平等な状況でスタートすることになり、すごろくにおいてこれは無視できないことです。少しくらいの差なら楽しめなくもないですが、無視できないくらい大きな差が生まれると、さすがに厳しくなってきます。(ドラえもんひみつ道具王決定戦がそうであったように)

 プレイを続けたことで隠しキャラも全員出てきて、ゲーム中に登場する全てのキャラ固有サイコロの出目が判明したので、まずはここで今作の強キャラの定義と具体例について説明しておこうと思います。

 まず定義の方ですが、このゲームはサイコロの出目が大きいほど強いゲームなので、強キャラは「通常サイコロより出目の平均が大きいキャラ」とします。通常サイコロの全ての面の出目を合計した数値は21なので、これよりも合計値が高いキャラが強キャラです。今作には三人います。

 まず前回言った通りのテレサ、合計値24です。続いてワリオが同じく24で、テレサと並び同率2位となっています。

 問題は唯一かつダントツの一位、クッパです。その合計値はなんと28。出目の平均にすると、通常サイコロが3.5のところをクッパは4.6以上。クッパサイコロを振り続ける限り、その出目は強キャラ以外のキャラと比べると確率的に常に1多くなるということになります。強すぎです。

 あれほど「追加で1~2のサイコロを振ってくれる仲間システムが強い」と言っていたのに、クッパだけは開始早々に1しか出ないサイコロを振ってくれる仲間を連れているに近い状態にあるのです。もう一度言いますけど、強すぎます。

 一応これら強キャラの共通点として「コインを没収される出目(進めるマスは0)がある」ことが上げられるので、制作側としてはそのデメリットで均衡を取ったつもりだったのでしょう。しかし今作は「出目0は進まないのではなく、もう一度足元のマスに停止する」という仕様になっているので、青マス(コイン3枚がもらえる効果)やアイテムマスの上に立ちながら強キャラが固有のサイコロを振れば、そこまで大きな損失なく、他者より多くのマスを進むチャンスが得られることになります。

 正直言ってここのバランスはクソです。一番強いクッパでさえコイン没収のデメリットはたったの3コインなので、足元が青マスなら相殺できる程度という極めて軽いペナルティしかありません。このペナルティが敗北に繋がるケースは、固有のサイコロでより多く進んだことが勝利に繋がるケースよりずっと少ないでしょう。

 またキャラ性能という概念が生まれることの常で、勝つことを第一に考えた時に、強キャラ以外を使う価値がまったくなくなってしまう問題も、今作はしっかりと持ってしまっています。〇〇を使うならクッパでいいじゃん、ワリオでいいじゃん、テレサでいいじゃんとなってしまいます。

 マリオパーティは四人で遊ぶゲームなので、せめて強キャラが四人いてくれればまだよかったのですけど、いやそれもダントツ強いクッパがいるからダメか……という感じです。キャラ固有のサイコロがあること自体は確かに新鮮で楽しいのですが、ゲームバランスの出来だけで見れば、無駄に過去作より劣ってしまったと言わざるを得ません。

 ただ、どれだけ言っても所詮はサイコロなので、いくら確率が有利だろうと運が絡みます。クッパだって100回使えば100回誰よりも多く進めるというわけではないので、そこが救いとなってドラえもんの時のようなことにはなっておらず、向こうに比べれば今作はキャラ性能の差込みでもまだ全然楽しいです。

 繰り返します、ゲームバランスに多少の難はありますが、それでも今作は楽しいです。

 

その2 マップの質と数

……まず、今作にはマップが4つしかありません。ルールが似通っている過去作のマリパ8では6つ、ルールに大きなテコ入れがあったその次のマリパ9では6つ+おまけが1つ、自作マリパ10で5つに減ったものの、wii時代までの過去作を見ると「4つ」というのはあり得ませんでした。

 今作をすごろく単体のゲームとして見ると、恐ろしいほどのボリューム不足です。ぼくも実際マップ4つではさすがにすぐ飽きました。10の時点で1つ減ったことで若干のボリューム不足を感じつつ悲しんでいたのに、今作のこれは大きな問題点だと思います。

 さらにつらいことに、4つのマップのうち1つの質が明らかに悪いです。どういうことかというと、1マップだけジュゲムがチェックポイント式ではないのです。挙句に「ジュゲムが出るマス」はそのマップにはありません。「ジュゲムが出る「可能性のある」マス」だけがあります。頑張って止まったあと、運に身を任せなければなりません。しかもそのマスは「チェックポイント式のジュゲムだって1つしかなかったでしょ?」と言わんばかりにマップ中たった1つです。

 ジュゲムを前提に今作のゲームバランスが作られていることは話した通りなので、ジュゲムの確定どころがないマップではまともに戦えません。しかもそのマップは地形が大きく二つに分かれていて、特定のマス(ワープ効果のマス)に止まらなければそれを行き来できない仕様なのに、各所であるイベントがプレイヤー全体でとはいえ「〇〇回目に停止(あるいは通過)した時に効果発動」という物が多いというおまけ付きです。

 そんなイベントを設置されても、ただでさえワープマスに上手く止まらなければいくら大きな出目を出しても思い通りに動けない状況なのに、そうそう起動できるわけがないです。挙句の果てになぜか、一回止まっただけでスタート地点まで戻されるイベントマスはきっちり設置されています。動きの不自由さは最高潮です。

 ただでさえジュゲムを使おうと思ったら(ランダム要素を考えないとしても)しっかり狙ったマスに停止しなきゃいけないのに、そんな状況で他の複数回停止しなきゃ成立しないイベントが発動するわけがないんです。このマップだけ制作者は馬鹿なんじゃないかという気がしてなりません。

 正直、そのマップだけダントツで全っ然面白くないです。ジュゲムが半分不在なこととイベントが全然起こらないことで、バランスが悪ければ楽しくさえないクソゲーになっています。ある意味理屈通りなので「ちゃんとクソゲーになっている」と言える状況ですが、そんなの証明されても全然嬉しくないです。

 しかもそれが4つしかないマップのうちの貴重な1つなので救えません。今作のマップは実質3つです。すごろくだけで見た場合、とてもフルプライスの代物とは思えません。

 たださっきのキャラ性能の差の話と同じで、こちらにも擁護点があります。今作はすごろくが貧弱な代わりに、その他のモードが充実しているのです。すごろくとミニゲームのフリープレイの他に、マリパ9でサッカーとボウリング、10でバトミントンと来ていた恒例のおまけモードが今作では野球盤としてしっかり受け継がれている上で、なんとそこからさらに別の大きなモードが2つ用意されているのです。

 CMでも映っていた「川下りモード」と「ほぼリズム天国モード」(当然どちらも正式名ではない)の出来はなかなかで、すごろく以外にこれほど大きな別モードが搭載されているのは初めてです。それを思えばすごろくのボリュームがいつもより少なかったのも、まあそれなりに納得できます。

 ただ。今回はすごろくの話に絞って書いているので詳しくは書きませんが、上記の2モード自体にもそれなりの問題点があることは事実です。それとマリオパーティといえばすごろくというイメージが過去作から続いているので、追加した新要素のために大本命のすごろくをボリュームダウンしていいのかと言われると、少なくともぼくとしてはあまり肯定的にはなれません。

 ……という感じで問題点は拭いきれませんが、キャラ性能の話の時と同じで、それでも総じて楽しいゲームだと言えます。前回の作文に書いたような「過去最悪」ということはないと思います。すごろくがしっかりしてないせいで「過去最高」にもなれないのが悲しいです。

 

その3 テンポが劣悪

……これが今作の最大の悲しみかもしれません。

 キャラ性能の差はプレイヤー全員が自重すれば解決、ミニゲームを苦手とする人が強キャラを使うなどすればむしろ良い物となる可能性がありました。マップの数が少ないこととその上で1つのマップがクソゲーになっていることも、逆に言えば他のマップなら少ないとはいえ確実に楽しめるということです。

 しかしこの「テンポが悪い」という点だけは、すごろくを遊ぶ限りどうやっても付いて回る問題です。回避不能、見て見ぬふりができない要素なのです。

 具体的には、まずスターの移動がクソ遅いです。マリパ8では一度たどり着くたびにスターが別の地点へ移動する場合単純なワープで移動していましたが、今作ではキノピコが風船で毎回毎回ゆ~~~くりと次の地点へ移動して、それからそこにスターが出現します。めっちゃ遅いです。

 次に、何回遊ぼうとキノピオが解説を入れてくるという点です。今作を何度繰り返し遊ぼうと、同じマップを何度繰り返し走り回ろうと、キノピオは必ず、

「今手に入れたアイテムを使ってみませんか?」

「スティックを横に倒すとサイコロを(通常とキャラ固有で)入れ替えられますよ!」

 などのアドバイスを入れてきます。そしてマップを見ようかと思ったら、

「このマップはこういう特徴があります。こう動くのがおすすめです!」

 という話を毎回突っ込んできます。しかもさっきまでのアドバイスと違って、マップを開いた時のアドバイスボタンを1~2回押したくらいでは終わってくれません。

 これが何度遊ぼうと条件を満たすたびに毎回入ります。というか普通に遊んでいたら毎回条件を満たします。「うん、知ってる」という情報がひたすら入ってきてテンポを阻害するのはなかなかのストレスです。

 せっかくマップ開始時に「このマップは初めてですか?」と聞くのだから、そこの返答次第で以降アドバイスを入れるかどうかくらい変えてくれればいいのに、この劣悪テンポは非常に残念です。擁護できません。

 また、誰かがスターを手に入れるたびにいちいち長いムービーが入るのもテンポを悪くしている要因の一つになっています。ムービー中に現在の順位表などが公開されますけど、そんなのわざわざ見せられなくても把握できますし、何よりさっき言った通りスターの移動がクソ遅いことと合わさってしまっているので、スター関連のテンポが本当に悪いです。

 もう一度言いますけど、これらテンポの問題については擁護できる点がありません。だからといって即座にクソゲー認定するほど重大なことでもないのですけどね。

 問題点はこれで以上です。

 

 

・結論

 スイッチ版マリパはすごろくが思ったより良いゲームバランスになっていて、なおかつ8の頃のようなこともなくちゃんとミニゲームが楽しく、操作しやすいです。さらに新たな試みですごろくとは別なモードがいろいろ入っていて、新しい面白さが開拓されていたのも確かです。当然ながら前回の作文での感想は撤回します。

 しかしそれでもやっぱり問題点は多いので、これは前回言った通り、次回作が神ゲーになることを祈ります。次回作を作文で褒めちぎる日がとても待ち遠しいですね!

 

 ↓一年越しの続き↓

https://arisu15849.hatenablog.com/entry/2020/07/30/213408