マリオパーティなどの、ミニゲーム搭載型すごろくについての持論、中編。

 Wiiパーティというゲームには、それなりの知名度があると思う。忘れている人が多いかもしれないが、発売当時は嵐の五人がCMをやっていたりしていたのだ。嵐が勢ぞろいしてCM打ってた物をマイナーだとは言わせない。

 似たようなノリのCMが、現在ニンテンドースイッチで遊べるマリオパーティを宣伝するために放映されている。出演者についてはいくら思い出そうとしてもウエンツの印象しかないので、リアルタイムのことであるにも関わらず記憶が定かではないけれど、今はそんなことはどうでもいい。

 要するに「Wiiパーティシリーズ(全二作)」と「マリオパーティシリーズ(無数にある)」は有名な作品なのだ。しかし、今回ぼくが話題にすると言ったゲームには、それら2シリーズ以外の物があったことを覚えているだろうか。前編の最後の方でも言ったので覚えていると思う。

 ドラえもんひみつ道具王決定戦。このタイトルは、先に挙げた2シリーズに比べてマイナーもマイナー、「ちょっと聞いたことあるような気がする」なんてケースもレアなくらい知名度の低いゲームだと言えるだろう。

 このドラえもんのゲームのCMを、ぼくは小さい頃に見たことがある気がする。しかしあまりに遠い昔の記憶なので、気のせいだったかもしれないし別のCMを勘違いして記憶しているのかもしれない。なので「マイナーである」と断言する理由にCMが無いからという理屈は使えないのだけれど、それでもこれがマイナー作品であることを確信している。この根拠のない確信は、おそらくこのゲームを知っている少数派のみなさんも同じように抱いているはずである。

 そんな、有名どころのミニゲーム搭載型すごろくをプレイしてその面白さに魅了されたぼくとその家族が、やがてたどり着いた場所、ドラえもん。有名どころとは一味違ったゲーム性を持ちながら結構なハイクオリティに仕上がっているこの作品について語るところから、中編をスタートすることにしよう。

 

 

☆「ドラえもんひみつ道具王決定戦」

・ルールについて

……このゲームの勝利条件は「一番多くのポイントを取得したままゲームを終了すること」である。そしてゲームの終了条件は「既定の周回数を三人が満たすこと」となっている。三人という人数固定の条件からなんとなく察せるように、このゲームもWiiパーティシリーズと同じく四人対戦前提のゲームとなっている。

 周回と言うからにはマップは円形となっており、スタート地点はゴール地点を兼ねていることになる。そこをぐるぐる回るうちにマスの効果やミニゲームに勝利することによってポイントを稼いでいくのである。ちなみに「既定の周回数」というのは「2・4・6」の三択で選ぶことができる。

 そしてこのゲーム最大の特徴は、ドラえもんらしく「ひみつ道具」というアイテムが登場することだろう。ひみつ道具WiiパーティUのきせかえスゴロク(Bすごろく)における特殊サイコロのような「アイテム」の立ち位置にあるが、あの運任せクソゲーと違ってドラえもんでは道端に転がっている物を拾う以外に、ミニゲームに勝利すると少量のポイントと共にこの「ひみつ道具」を入手することができるのだ。

 サイコロとミニゲームを切り離すと、ひいてはアイテムとミニゲームを切り離すとクソゲーになる。そんな教訓をくれたきせかえスゴロクに対して、この作品のゲーム性、バランスはどうなっているのか、順を追って説明していこうと思う。

 

・ゲームバランスについて

……このゲームのマップには自由に選択できる分かれ道が多く、またひみつ道具によってサイコロを操る機会も多いので、ポイントを増減させる効果のマスが散りばめられた道を突っ走っていると、ほぼ確実にポイントは増えていくことになる。

 またミニゲームに勝利することでも少量ながらひみつ道具と一緒にポイントは得られるので、ほとんど「適当にプレイしとけば少なからずポイントが増えるゲーム」になっていると言って過言ではない。もっとも、それはいつかは一度くらいステージに上がれるきせかえスゴロクでも、ゴールに近づく=ポイントが増えると解釈した場合のWiiパーティシリーズのAすごろくでも同じことなのだけれども。

 ではこのゲームは、各々がひみつ道具を駆使して良い出目を出して着実にポイントを高めあい、その速度を競うゲームとなっているのだろうか。断じて否である。ひみつ道具というのは、未来の道具というのは、そんな生易しい物ではない。

 直接的な効果の中で、ゲーム中最も強力だと思われるひみつ道具を一つ紹介しよう。

 

「タスケロン……ランダムな相手からポイントを半分奪う」

 

 半分という雑な割合で他者からポイントを奪う。これが非常に恐ろしい。何が恐ろしいって、「半分減らす」ではなく「半分奪う」なのだ。ダントツのビリでもこの道具を使い、ランダムな相手が1位の者となれば、余裕で逆転できるだろう。

 実際、周回後半にタスケロンをくらうとほぼ確実に1位争いからは退くことになる。そしてそんな恐ろしい効果を持った道具が、このゲームには実は結構な数存在している。

「身代わりバー……選んだ他者と位置を入れ替える」

 などもそれに当たる。直接ポイントに関与することはない能力だが、このゲームには周回ボーナスという物があるのだ。早く周回すればするほど多くのポイントがもらえるというシステムで、各周回の一等賞には15ポイントが贈呈される。

 15という数字がどの程度の重みなのか、詳しくはゲームをプレイしてもらわなければ伝えられないけれど、このゲームでは余程のことがない限り100点以上ポイントを所持する人は出てこないと言えばある程度の重さはあることが伝わるかなと思う。

 このような強力な道具を使ってポイントをもぎとり、逆に奪い返されないうちにさっさと既定の数の周回を終える。それがひみつ道具王決定戦というゲームの本質なのだ。道中でいくらポイントを拾おうと、落とそうと、大して関係ない。強いひみつ道具をぶん回してなおかつ最大限の成果を上げたやつが勝つ。そんなアグレッシブなゲームなのである。

 きせかえスゴロクを銃撃戦とするなら、ドラえもん核兵器の飛ばしあい。そんな世紀末すごろくな本作だけれど、あまりに世紀末すぎて、

「ポイントこんなに取られたら勝てないじゃん! クソゲー!」

「お前も同じようにして取り返せばいいんだぞ」

 という混沌としたバランスで近郊が保たれている。どマイナーなゲームだけれど、かなり遊んでいて面白く白熱する物になっているという事実。これはちょっとした奇跡なんじゃないかと思う。

 しかし、楽しい核兵器の飛ばしあいとなるこのゲームにも欠点がある。強すぎる道具がある……というわけではない。それは、「強力なひみつ道具の入手手段のほとんどがミニゲームに勝利すること」という点である。

 控えめな効果の道具ならそのへんにランダムでいくらでも落ちているものの、ミニゲームにいくら勝とうともサイコロに見放されれば勝ちが洒落にならないレベルで遠のくシステムはクソゲーだが、サイコロでいくら良い目を出そうともミニゲームに勝てなければ著しく勝利が遠のくシステムもまた問題だらけなのだ。

 まず本作のミニゲームの結果によって道具をもらえるのは「1位」だけである。2位以下は等しく「敗者」として扱われるシビアなシステムなので、ゲームが苦手な人はなかなか勝つことができない。

 そしてなぜか、この作品のミニゲームには運ゲーがものすごく少ない。無いと言ってしまってもいいくらいだ。総じて「シビア」の一言に尽きる作品だけれど、家族で遊ぶ場合などは、そのシビアさがネックになる。

 ゲーム下手っぴな人でもある程度楽しめることがミニゲームの有無に関わらずすごろく系ゲームの魅力であるはずだが、格闘ゲームほどではないにせよシビアな本作はその魅力が非常に薄いのだ。運要素と実力要素の配分の難しさをひしひしと感じつつWiiパーティのAすごろくの完璧さを思い出すけれど、この問題点については一応、解決策と呼べそうな物がある。

 ずばり、同じくらいの実力の者同士で集まること。ミニゲームは所詮ミニゲームであることから一つ一つの底は浅く、ある程度ゲームが出来る人が集まれば実力は拮抗することになる。ぼくが友達と遊んだ時などがまさにそんな感じだったので楽しかったのだけれど、はたしてこれを解決策と呼ぶのが正しいのかという話になると、ぼくとしては限りなくNOに近い保留となる。

 本作はあまり家族向き、もしくはカップル向きのゲームではないのかもしれない。と言っても我が家はそれなりにやりこんだし、四人前提のゲームをカップルがやるのかははなはだ怪しいけれども。……ゲームでダブルデート?

 話が逸れたのでちゃんと戻そう。楽しめる状況が限られるという意味ではこのゲームには欠陥があることになるけれど、逆に言えば本作は楽しめる状況(拮抗した実力の対戦相手)さえ整えばとても楽しいパーティゲームということになる。ということは、このゲームは本質的にはWiiパーティUあたりよりも面白いゲームということになるのでは……?

 と思うけれども、さすがにそこまで上手くいくこともない。このゲームにはもう一つ欠点があるのだ。それは「キャラ性能の差が激しい」ということである。

 すごろくゲームにキャラ性能があること自体珍しいと思うが、このゲームのキャラ差はすさまじい。条件を満たすと使える各キャラ固有の必殺技という概念があるのだけれど、ドラえもんジャイアンだけこの必殺技が強すぎるのだ。

 条件自体は全員共通なので平等になっている。しかし、各必殺技を発動した際の効果は以下の通りである。

のび太……2ターンの間、他プレイヤー全員の出目を「1」にする」

ドラえもん……強力なひみつ道具を2つ入手する」

「しずかちゃん……2ターンの間、他プレイヤーはひみつ道具を使えなくなる」

ジャイアン……各プレイヤーからランダムで1つずつひみつ道具を奪う」

スネ夫……数ターンの間、他プレイヤーがポイントプラスマスの効果で得たポイントを自分も得る(具体的に何ターンの効果だったのか忘れた。たぶん2かな?)」

「ドラミちゃん(隠しキャラ)……2ターンの間、自分のサイコロの目を1~3の間で選ぶことができる。なお、ドラミちゃんは全マップを遊ぶと使えるようになる」

 なぜドラえもんジャイアンが強すぎるのか。その理由を説明するよりも、まずはこのゲームの性質を思い出してほしい。

 早く周回した者が勝つのではない。良いマスにばかり止まった者が勝つのではない。強いひみつ道具をぶん回してなおかつ最大の成果を上げた者が勝つのである。他人の出目を1にするとか、他人が得たポイントを得るとか、自分のサイコロを操るとか、そんなことは些細なことなのだ。

 ドラえもんの強力な道具を2つ入手する必殺技は、核兵器を2つ入手するということである。他のキャラの必殺技が、

「出目悪くさせて悪い効果のマスに止めたり、周回ボーナス15点から遠ざけるわ」

「コバンザメ作戦でポイントもらうわ」

「自分の出目操作して良いマスにばっかり止まるわ」

 とか言っている中で、青タヌキだけ実質、

「サイコロ一気に4個振って進むわ」

「誰かのポイント半分もらうわ」

「あ、まだ既定の周回数に満たないけどこの周回終わったらゲーム終了ね」

「狙った相手と場所入れ替えるわ」

「どんな道具の効果に狙われても一回だけ無効化するわ」

 みたいな意味不明能力を1つではなく2つ使えるようなものなのだ。これが1つだったらまだマシだったのかもしれない。しかし2つである。1つでも他のキャラより強力な可能性が濃厚なのに2つである。他のキャラの2倍以上のポテンシャルを秘めていると言っていいだろう。

 もちろん出てくる道具はランダムとなるし、必ずしも核兵器級の化け物効果な道具が出るとも限らない。ランダムな相手から4ポイント奪うみたいな(他と比べれば)ささやかな効果の道具が出ることもある(それでも1位に当たれば8ポイント差までなら追いつけるわけで、しかも道具はもう1つ入手しているわけだが……)。

 しかし実際体感した感じでは、ドラえもんくんは結構な確率で1つはポケットから核兵器を取り出してくる。このゲーム最強候補のキャラだと言えよう。

 が、一応これに対抗できるのがジャイアン。他者に依存する上にランダムであること、道具を奪う効果の道具も多数存在しているゲームの性質上基本的に強力な道具は奪われる前にさっさと使うことから、核兵器を3つ強奪してくるという芸当はほぼ出来ないと言える彼の必殺技だが、それでも十二分に強力ではある。

 ドラえもんも取り出す道具は一応ランダムだったがしょぼい物を取り出すことはなかったので、それに比べるとランダム要素が強すぎる。しかし腐っても「一度に3つ道具を入手する効果」であり、その上ただ入手するのではなく奪っているのだから、有用な効果を持つ道具を奪えた時の利益は半端ではない。ドラえもんを除いた他キャラと比べれば頭一つどころか二つか三つくらい抜けた必殺技だと言える。

 そしてジャイアンの最大の強さは、温存しておけばドラえもんが必殺技を使ったタイミングに合わせられることである。「ひみつ道具の最大所持可能数は4つ」というゲームの性質上、ドラえもん核兵器級の道具を2つ引き当てたことを前提とすれば最悪でも2分の1の確率で核兵器級を1つ奪えることになる。

 自分が入手するだけではなく奪うのだ。しかもついでに他の二人からも何かいただけると来ているので、この事実がある以上、ジャイアンドラえもんに迫るポテンシャルがあると言えるだろう。

 一方で、スネ夫の必殺技の弱さが半端ではない。場合によっては何一つ戦果を上げられない上に、それなりに活躍できたところで2強の二人には遠く及ばない。さらに間抜けなことに相手が、

「ポイントプラスマス(止まると何点もらえるのか書いてある)」

 に止まった場合にのみ、その場合でしか効果が発動しないので、

 「グッドイベントマス(何かしらの良い効果がランダムで得られる)」

 に止まった相手がポイントを得た場合は、スネ夫の能力はまったく適用されないのである。総じてしょぼい能力だと言えよう。ぶっちゃけスネ夫を使う人はいない。

 さらに言えば、のび太とドラミちゃんはまだマシなものの、しずかちゃんも相当弱いと思われる。2ターンの間道具の使用を禁じたところで、結局3ターンから普通に使われては意味がないからだ。

 しずかちゃんの必殺技に意味を見出すためには、

「効果期間中に道具を奪う効果の道具を入手し、使用禁止されて相手の手元にある強力な道具を奪う」

「道具を奪う効果の道具を2つ持っている場合に、1つを奪っている間にもう1つを使われることを避ける」

「効果期間中に既定の回数まで周回を終えて、奪い奪われる恐怖の戦場から根本的に離脱してしまう。または、周回ボーナスを僅差で争っている相手に出目を大きくする道具の禁止を命じる」

「身代わりバー(位置入れ替え)のような発動タイミングが重要な道具のタイミングを外させる」

 などの作戦が考えられる。これのうち1つ目の作戦は「相手の手元に強力なひみつ道具があること」が前提な上、道具を奪う道具を入手する確実な手段はないので不確定かつミニゲームに勝利する必要が生まれる可能性があり、とにかくまったく安定しない。2強二人がお手軽に利益を上げていることを考えると弱い。

 2つ目の作戦はそれなりに有効だけれど「そもそも道具を奪う道具を2つ所持すること」「奪いたい道具が2つあること」が前提になるので、これも全然安定しない。

 3つ目の作戦の特に戦線離脱の方はかなり有効だけれど、使えるタイミングが周回の後半の中でもさらに後半といった感じなので、有効な場面が限られすぎている。いつ使っても強いドラえもんなどに比べると言うまでもない。

 4つ目もやはり相手依存な上、タイミングを外せば二度と同じようなタイミングは訪れないという保証があるわけでもない。

 確実に相手を遅らせて、なおかつタイミングを見計らえば相手にマス効果での不利益も与えるのび太や、確実に良い効果のマスに止まるドラミちゃんなどの「平凡二人」に比べると、しずかちゃんはスネ夫寄りの「弱キャラ」だと考えられる。

  ……さて、これでキャラ性能の差が激しいことは十二分に説明したわけだけれど、ではそもそも性能差が大きいと何がいけないのかという話に移ろう。

 普通のゲームにおいて強すぎるキャラがいると、そのキャラを使う人が多くなる。そうなると対戦ゲームの場合は同じキャラばかりでワンパターンになり飽きが早くなるし、一人用ゲームにおいてもわざわざ弱キャラを使うのが楽しいという物好きな人以外は、強キャラに飽きたら別キャラに行くモチベがなくなってしまう。

 が、本作において強キャラが存在することの問題点は飽きるとか他のキャラを使う気が起きないとか、そういうレベルじゃあない。なにせこのゲーム「複数のプレイヤーが同じキャラを使うことはできない」のだ。

 一人がドラえもんを使うなら、残る三人は他のキャラを選ばなくてはならない。三人のうち一人がジャイアンを使うなら、残る二人は他のキャラを選ばなくてはならなくなる。強キャラ二人の抜きんでた力は説明した通りなので、つまりどうなるのかというと……。

 ぼくは、ドラえもんジャイアン以外のキャラが1位で終わったところをほとんど見たことがない。間違いなく強キャラ二人の勝率が九割を超えている。結果発表のアナウンスはドラえもんが務めるので、

「今回のひみつ道具王は…………ボクだ!」

 というセリフを何度も聞くことになった。ドラえもんジャイアンの勝率が等しいとすれば、ほぼ五割に近い頻度でドラえもんが勝っていたのだから聞き飽きもする。このひどいキャラ性能差のせいで、本作は「ミニゲームやりながらのすごろくでポイントを競い合うゲーム」になるはずが「キャラ選択時にプレイヤー間で行うジャンケンに魂をかけるゲーム」になってしまっているのである。

 ここまでくると、もうこれはゲーム性がシビアすぎるとか言ってる場合じゃない欠陥だけれども、この欠陥には胸を張って「解決策だ」と言える対処法がある。

 実はこのゲーム、オプションモード的な物を開くと「パスワードを入れる場所」みたいなのがあること気が付く。パスワードをネットで調べて入力すると、なんと「全キャラの必殺技を同じ性能にするモード」が解放されるのだ。ばっちり解決している。

 問題があるとすれば、すごろく系ゲームでわざわざオプションを開くことはほぼ無く、またゲームがマイナー極まるので「パスワードという概念がある」ということに気が付くのが難しいことだろう。我が家も全マップを制覇したあとに気が付いた。

 そういう意味で不親切だし、パスワード入力しないとまともに遊べないゲームバランスってなんだよって話だし、それぞれのキャラに見た目や声以外の個性を付けるという試みが他のすごろく系ゲームにはなく試み自体は面白かったので、楽しく遊ぶためにはそれを無効化しなくてはならないのが悲しく感じる。ぜひ次回作で再調整を……と言いたいところだけど、次回作なんかまず間違いなく出ないだろう。悲しい。

 総評としては、キャラ性能を統一して遊んだ場合に限って、全体的にシビアなことを気にしなければ有名どころのゲームと同等かそれ以上に楽しいゲームだった……となる。

 またシビアとは言っても、それはミニゲームで勝利することが重要かつ1位しか勝利扱いにならないことが理由であり、一発で勝負を決めるほど大きなポイントを動かす道具は「ランダムな相手から」というテキストが付いていることがほとんどであったり、なんやかんや言ってもすごろくなのでマスの効果で有利になったり不利になったりもするので、他のゲームに比べればクセが強いもののしっかりと「運と実力のブレンド」というミニゲーム搭載型すごろくとしての模範的魅力も備えている。

 むしろ、ミニゲーム搭載型すごろくがしたいけど他のゲームよりもうちょっと実力主義でやりたい、という人にはWiiパーティマリオパーティよりおすすめかもしれない。というか楽しいから一回プレイしてみてほしい。増えろ同志。

 

 さて、前回二本のゲームを一気に語ったので、今回ももう一本いっておこうと思う。いよいよ本題とも言える話題、マリオパーティについての話に突入である。まあ、そのマリオパーティが三本もあるんですけどね……。書いてる方がすでに長さで疲れている。

 

 

☆「マリオパーティ8」

・ルールについて

……四人まで一緒に遊べるゲーム。たしかマリオパーティは三人以下でも遊べたはずだけれど、どうだったかな。マリオパーティ10はコンピューターを入れずに三人でも遊べることを昨日確認したけど、8についてはちょっとおぼろげ。

 ゲーム自体のルールとしては「スター」と呼ばれる得点のような物をより多く集めた人が勝ちとなる。そしてこのゲームの最大の特徴とも言える性質として、スターの集め方がマップ毎に変わるということがある。また、全マップ共通で厳密にはゴールの概念が存在せず、既定のターン数15ターンが経過することでのみゲームが終了する。

 スターとは別に「コイン」という概念もあり、これはマス効果で増減することに加えて、各ターンの最後(全員がサイコロを振り終えたあと)に行われるミニゲームに勝つことでも取得できる。というかそれがメインの資金源となる。

 取得したコインを「ショップで買い物」することで特殊サイコロなどのアイテムに変えたり、スターの獲得にコインが必要な場合もあったりと、マップによって変わるコインの利用方法は多岐にわたる。なお、特殊サイコロはどのマップでもチェックポイントを通ればランダムで一つ手に入る。

 スターが同数のままゲームが終わった場合はコインを多く持っている方が勝ちとなるルールがあるものの、ミニゲームがサイコロに直結しないという性質上、なんとなく嫌な予感がするゲームである……。

 そして、その予感は少なからず的中することになるのだった。

 

・ゲームバランスについて。

……ルールが各マップで変わるので、まずはマップの紹介をしよう。マップ名はうろ覚えなので名前についてはイメージだけ伝えることにする。

 

「ジャングル……分かれ道があるマップ。一度誰かがスターを取るとその地点からはスターが消え、別の位置にスターが出現する。広義の意味でのゴールがその都度変動するので、すごろくとしては独特な面白さがある。スターの取得にはコインが必要」

 

「電車……一本道のマップ。運転席にスターがあるので、それを求めていくつかの車両で構成された電車の中を走ることになるが、イベントで車両の順番が入れ替わりスターが遠くなったり近くなったりする。スターの取得にはコインが必要」

 

「海……一本道のマップ。まっすぐ進んだ先の終着点にスターがあり、たどり着けば無料で取得することができる。そして取得後、再びスタート地点に戻される。道中にはショップの他にイルカのタクシーがあり、コインを払って乗せてもらうとより早く前に進めるので、スターが無料の分タクシーにコインを使うことになる」

 

「お化け屋敷……分かれ道があるマップ。どこかにスターがあるものの、一定以上の先が見えない特殊なマップであり、その上迷路のような構造になっているので分かれ道では「どちらに進めばスターがあるのか」を予想しながら進むことになる。予想と言っても、先に進んだ人が外れルート確定していた場合そこを避けること以外は、もう神に祈るくらいしかやることがないのだけれども。スターの取得にはコインが必要だが、たどり着くことが難しいからか他マップに比べると安い。」

 

「ホテル……分かれ道があるマップ。コインを使ってホテルを買い占めることが目的のマップであり、買い占めた分だけスターを取得することができる。買い占めた人よりも多いコインをつぎ込めばすでに買われたホテルも奪うことができるので、ルールそのものがスターの奪い合いを推奨している珍しいパターン」

 

クッパ……自分で選べない分かれ道があるマップ。初めから全てのプレイヤーがスターを複数個持っており、このマップだけに登場する特殊サイコロの効果を使ってバトルロワイヤル的にそれぞれのスターを奪い合う特殊ルールになっている。特殊サイコロを拾えるチェックポイントが他のマップに比べて多いが、ショップの数はそうでもない」

 

 以上、計6マップ。これらのマップ共通の特徴をまとめると以下の通りだろうか。

「スターの取得にはコインが必要。(海だけ例外だが、タクシーがあることを考えれば、事実上コイン必須とも言える)」

「ショップが配置されていて、そこで特殊サイコロを購入できる」

「スターの取得には、まず目的地にたどり着かなくてはならない。(クッパのマップでは他プレイヤーが目的地になる)」

 これらが示すことはつまるところ何なのか。まとめてみるとこうなる。

「コインがあると、つまりミニゲームに勝つほど、有利にゲームを進められる。極端にコインがない場合そもそもビリが確定する」

「しかし、コインをどれだけ大量に持っていても、スターやショップにたどり着けなければ得点には繋がらず意味がない。(ちなみに、ショップで一度に買えるサイコロは一つだけだし、どれだけコインを持っていようとも一回の到達で取得できるスターも一つだけ)」

 コインをどれだけ持っていても、目的の場所に行けなければ意味がない。ショップもスターも通るだけで関連した行動(買い物や得点獲得)が取れるため、通り過ぎるという概念はない。逆に言えばいくらコインを所持していても、スターや特殊サイコロの取得できる数は「その地点にたどり着いた回数」に依存してしまう。

 これらのことから導き出されることは……そう、大きな出目を出すほど有利というゲーム性である。コインがなければ行動が縛られるので多少マシにはなったものの、ミニゲームに「勝つだけ」では何の役にも立たない点は、あのきせかえスゴロクを彷彿とさせる。

 また、この作品のすごろく中に行われるミニゲームは1位のみが勝者となるシビアな設定なのだけれど、実際はバトルロワイヤル型の対戦よりも「2vs2」「1vs3」などのチーム戦が多い傾向にある。これがどういう影響をもたらすのかというと、チーム戦は「勝利チームのメンバーが1位」という扱いになるので、ミニゲームが苦手な人でもおこぼれを拾う形でよるコインを得られる機会が多いという事態になる。

 ミニゲームに勝てないとすごろくを含めた全体でも勝てなくなる……というゲーム性では確かに「じゃあミニゲームだけやればいいじゃん」となるので、スター取得にコインが必要な本作では下手っぴさんへの救済措置が必須だろう。それはわかる。しかしチーム戦のミニゲームの頻度はかなり多く、そうして救済しすぎた結果、「コインがないからスターが取れない」という場面を見ることはほとんどなくなっていた。

 もちろん道中のショップを利用できなくなるケースはままあるので、何の支障もないわけではない。しかしそれが大した支障にはならないのがまた問題なのである。なぜ大した支障にならないのかというと、それはこのゲームでの「特殊サイコロ」に問題があるからである。

 ここまで言い忘れていたけれど、このゲームで振るサイコロは、実は他のゲームとは違い十面サイコロとなっている。1~10のどれかが出るサイコロを普段から使ってすごろくを進めていくわけだ。逆に六面サイコロは存在しない。

 そして特殊サイコロで出目を増やす効果の最大は「三つサイコロを振る」となっている。つまり振れ幅は「3~30」である。三回振る分、きせかえスゴロクの倍数サイコロに比べれば確率が真ん中あたりに収束するだろうが、それでも運が良い時と悪い時の差が大きいことには変わりがない。また、そもそもチェックポイントやショップにたどり着けなければコインがいくらあっても特殊サイコロが取得できない問題もある。

 極端な運ゲーにしないため、ミニゲームに勝った者がショップを使うことで特殊サイコロを多くそして欲しい物をピンポイントで入手できるようにしているはずなのに、結局はその特殊サイコロを使った際に運の要素が深く絡んで来る。運が絡むにしても、どの結果を引いてもそれなりに強力だったひみつ道具王決定戦に比べると、いろいろ策は打ったけど結局運ゲーから抜け出せてない感じが強い。

 さらに、振る数を増やす特殊サイコロ以外にも、いろいろな効果の特殊サイコロが存在しているのだが、その特殊サイコロたちにも問題がある。説明のために、まずはとりあえずその全てを紹介する。

 

※特殊サイコロはキャンディを食べて効果を発揮する設定なので、名前のあとに「〇〇キャンディ」という形でキャンディの文字がくっ付くが、紹介時はキャンディを割愛する。

 また、サイコロそのものに影響を与える(増やす、出目を操るなど)効果の特殊サイコロ以外は、使用したあと普通のサイコロを振って移動することになるルールがある。

 

 

「コロコロ……使用したターンに限り、進む際にすれ違った他プレイヤーからコインを10枚奪う(複数人とすれ違った場合全員から10ずつ奪う)」

ドッスン……使用したターンに限り、進む際にすれ違った他プレイヤーのコインを半減させる。奪うわけではない」

「カクカク……使用したターンに限り、進んだ数の三倍の数だけコインを取得する。(得られるコインは3~30枚)」

「決闘……通常のサイコロを二つ振って進み、誰かとすれ違った場合そこでストップして、その人とミニゲームで対決する。勝った場合、コインかスターをランダムで奪う」

「分身……使用したターンに限り、進む際にすれ違った他プレイヤーから特殊サイコロを一つランダムで奪う。(名前が分身ではなくバラバラだった気もするけど気にしない)」

「ぐるぐる……使用したターンに限り、進む際にすれ違った他プレイヤーをスタート地点に戻す。(ぐるぐるが正式名称だったと思うけど、我が家ではもっぱら竜巻と呼んでいる)」

「バネバネ……サイコロを振る前に、ランダムで他プレイヤーのいる地点にテレポートする。その後サイコロを振れる。(ぴょんぴょんが正式名称だっけ……?(記憶が怪しいことだらけ))」

「ゆっくり……1~5の間で好きな出目を選べるサイコロ。選ぶというのはスローモーションのサイコロを目押しすることなので、若干の難易度はあるが慣れれば極めてイージー

「バサバサ……サイコロを振る前に全員からランダムな数のコインを奪う(1or5or10)。」

 

クッパのマップのみ「サイコロを二つ振りすれ違った人からスターを奪う」などの特殊サイコロだけが登場する。サイコロ三つ振ったり、すれ違った人からスターを2つ奪う効果もあった気がするけど、クッパマップはクソゲーすぎて一回しか遊んでないので覚えていない。

 

 

 ……サイコロを二個振る効果の物と三個振る効果の物を除けば、だいたいこれで全てだったと思う。見てわかる通り「すれ違った相手に効果を及ぼす」効果が多い。そして特殊サイコロは効果を発揮した時ではなく、サイコロを振る前に使用を決定した時点で消費する。

 つまり、半分近くの特殊サイコロは前方近い範囲に他プレイヤーがいなければ効果を発揮できず、なおかつ運次第で不発になるということである。2マス先にいる相手を狙って発動したら1が出て不発に終わった……というケースもありえる。そしてトドメとばかりにこのゲームは通常のサイコロが十面なため、六面でやるよりもプレイヤー同士の位置が離れやすい。

 コインで購入できる以上、実力要素をブレンドするための存在であるはずの特殊サイコロが、とにかく運に大きく左右されるのだ。中でもカクカクはひどく、偶然それをチェックポイントで拾った人が上手いこと10を出すとコインを30枚ゲットすることもあり得てしまう。ミニゲームに一勝してもらえるコインは10枚の環境で、である。

 4以上を出せばミニゲーム一勝分を超えるコインが手に入るアイテムが、チェックポイントを通過するだけで入手できる可能性が十分にあるのだ。もちろん普段から大きな出目を出すほどチェックポイントを通る回数は増えやすく、スターにたどり着く回数も増えやすい。ついでにチェックポイントでランダムな特殊サイコロをもらえること自体が運要素でもある。逆に言えば、小さい目を出せば出すほどこれらと逆のマイナスアドバンテージをくらうことになってしまう。

 要するに、出目さえ大きければミニゲームに勝てなくてもいくらでもチャンスがあるのである。また、その反対も同じことが言える。ショップが使えるということが大したアドバンテージにならない。そんなゲームバランスとなってしまっているのだ。というかそもそも「サイコロを二つ振る効果」の特殊サイコロはたったの5コインで変えてしまうのも問題である(三つ振る効果は20コインが相場)。

 また、本作のマス効果には、

「大量のコインとスターをタダでもらえる(全マップ)」

「次にスターへたどり着いた人は無料でもらえるor次にスターへたどり着いた人はスターを得られず、それどころか一つ没収される(電車マップ)」

「スター手前に配置されており、止まるとスタート地点に戻される(海マップ)」

「他プレイヤーのホテルを無料で奪う(ホテルマップ)」

 などの強力すぎる物が多々あり、運ゲーに拍車をかけている。

 結論としては、WiiパーティUのきせかえスゴロクの次くらいにひどい運ゲー。それがマリオパーティ8だということになる。ただしホテルのマップだけはコインで他人のスターを奪えるので一際コインの重要性が高く、実力が勝敗に結びつきやすい。

 逆にクッパのマップは特殊サイコロを使った際の出目が大きくなければスターが奪えず、チェックポイントやショップに次々止まらなければそもそも特殊サイコロを取得することができない=戦いに参加できない。さらに特殊サイコロを使わないと勝負が前に進まない仕様故かチェックポイントが他マップよりも多く、その結果、ミニゲームに勝ちまくる人より大きい出目を出しまくる人の方が圧倒的に強い、ほぼサイコロの運だけで全てが決まる運ゲーの極みとなっている。

 クッパのマップはきせかえスゴロクを超える運ゲー仕様となっているので、個人的にプレイしたことのあるミニゲーム搭載型すごろくの中で一番のクソゲーだ。そして唯一マシとも言えるホテルマップだが、ではそのマップだけは他のゲームよりも面白いのかと言われると……。もしそうであったなら、このゲームに対する評価も少しは変わっていたのかもしれないけれど。

 唯一このゲームを評価する点があるとすれば、それは「サイコロを〇個振る」という効果を使用していたことだろう。倍数サイコロなどという鼻くそほじりながら考えたような、雑の権化と言える出目増加アイテムを作らなかったことだけは評価できる。

 

 

 ……中編はこのあたりで終わる。後編ではマリオパーティ9と10の話をするが、いよいよそれが本題になる。というのも、9と10のことは「ミニゲーム搭載型すごろくの一つの到達点。完成系」だと思っているからだ。詳しくは次回語る。

 後編へ続く……。